【マッチレビュー】WBA対アーセナル~今季初の3連勝!~
明けましておめでとうございます。
2021年アーセナルの最初の試合はプレミアリーグ第17節ウェスト・ブロムウィッチ・アルビオン(以下WBA)との対戦になっています。
降格圏に沈むWBAですが、シティやリヴァプールと引き分けたりしています。
特に、サム・アラダイス就任後のリヴァプール戦ではリヴァプールがボール保持率78%、シュート数17本の猛攻を見せるも4-6-0のような形で守り1失点に抑え、試合終了間際のCKからの1点でドローに持ち込んだ。
正直、「強く」はないがかなり「厄介」な相手にアーセナルはどんな試合を展開するのか。
WBA0-4アーセナル
もくじ
両チームのスタメン
WBAは5失点大敗を喫した前節リーズ戦からは2人の変更をしてきた。
CBを務めていたオシェイが左SBにスライドし、CBにイヴァノビッチが入ったことと、前節では右サイドでの出場だったカラム・ロビンソンがCFに入りマテウス・ペレイラがトップ下でスタメン出場で、4-1-4-1から4-4-1-1に変更してきた。
かつてアーセナルに所属し137試合に出場したキーラン・ギブスはベンチスタートであった。
対するアーセナルは前節ブライトン戦から1人の変更だ。
前節途中出場から29秒でゴールのラカゼットがスタメン復帰し代わりにマルティネッリがベンチスタートとなった。
また、ラカゼットのスタメン復帰に伴いオーバメヤンが左にスライドした。
両チームの二次配置
アーセナルのボール保持時
チェルシー戦では左のハーフスペースを主戦場にしていたスミス=ロウと右ハーフスペースにいたサカがブライトン戦の後半と同様に右ハーフスペースと右の大外にいるようになり、左はティアニー、右はサカが幅取り役になることが多かった。
また、ベジェリンが昨季一時期やっていたビルドアップ時に3バックの右に入る形も披露し、その前にダブルボランチが並んだ。
ジャカやセバージョスが最終ラインに降りる時はベジェリンが1列上がり中盤のラインに加わったり、サカが中に絞った時は大外を上がるシーンもあった。
クロス精度こそあれだが、スピードも有るので、ベジェリンのオーバーラップは時折披露すると良いアクセントになっていた。
また、サカが中に絞ると入れ替わるようにスミス=ロウが外に流れて2人が入れ替わってもそん色ないクオリティを発揮できたのも右からの崩しが脅威になっていた。
以前の3-4-3では左サイドに人数をかける分、左編重になることが危惧され、実際に右ハーフスペース使えてない問題などもあって機能不全気味だった。
逆にこの4-2-3-1では右に人が集まる分、左で同じ現象が起きることが危惧されたがそうはならなかった。
まず、ティアニーが張って内側をオーバメヤンが使うというのが、大外ウィリアンで内側ベジェリンよりも適材適所だったと言える。
さらに、先制点のシーンやほかのティアニーの仕掛けのシーンのように大外での1対1で質的優位に立てていたというのももちろん大きいが、チーム全体の流動性が増し、ラカゼットが斜めの動きで左に流れるシーンやスミス=ロウが左のハーフスペースにも顔を出せたことが大きいと考えられます。
WBAのボール保持時
WBAは守備時の4-4-1-1からボール保持時はダブルボランチの一角のソーヤーズがアンカー気味にCBの前まで顔を出し、ギャラガーは右ハーフスペースを取る4-1-4-1のような形にスライドしていました。
しかし、こうなればアーセナルの中盤はそのままの形でプレスをはめることが可能になっていました。
基本的にWBAのボールを前進させる選択肢はCBからのロングボールかソーヤーズがサイドに振ってサイドをドリブルで前進するかでした。
対するアーセナルはラカゼットがCB間を切り、スミス=ロウがアンカーを抑え、WGがコースカットプレスをしてSBへのコースを抑える形になっていました。
ただ、WGのプレスの目的は奪うよりも蹴らせることが目的のように感じました。
取り戻した「らしさ」
2点目のシーンはアーセナルらしさ全開の1タッチでの連携とパス&ムーブで敵陣に侵入してのゴールだった。
アカデミーで長年培ったサカとスミス=ロウの連携とそれを助けたラカゼットの丁寧なポストプレーあってのゴールでした。
そして、少し前の調子の悪い時にはなかったボールを受けた選手を追い越してゴールに向かう動きがあったからこそラカゼットのポストもうまく活かせていました。
やはり、アーセナルのチームとしての調子の良し悪しを見る1つの指標として、ゴールに向かうオフザボールの動きというのはあげたいと思います。
アルテタの「クロス」発言の真意
アルテタは以前、「ウルブズ戦で33本のクロスを入れた、あとはエリア内に人数送り込めばいずれ点は取れる」という旨の発言をした。
これを聞いたグーナーはアルテタがペップイムズでもヴェンゲルイズムでもなくモイーズイズムの継承者なのでは?と危惧した(私も少し恐れたが…)。
しかし、ついにこの試合ではその真意とその合理性が証明されつつあるのではないかと考える。
サカの仕掛けからアジャイの背後から動くオーバメヤンへの右足のクロスはアジャイが下がりながらのクリアは雑になり、あわやオウンゴールでしたが、クロスバーを叩いて、跳ね返りをスミス=ロウがボレー、そのこぼれ球をラカゼットが押し込んでの追加点でした。
まず、このクロスはDFとGKの間を狙ったクロスなので、DFは下がりながらの対応を強いられます。
そうすると、このシーンのようなミスを誘発する可能性が高まります。
次に、このシーンではエリア内にオーバメヤン、ラカゼット、スミス=ロウが走り込んでいました。
そして、こぼれ球を押し込むことに成功しました。
人数をかければクロスが直接アシストにならなくてもこぼれ球を押し込めるということでしょう。
4点目もクロスからの得点でした。
オーバメヤン→ティアニーでティアニーからの速いクロスをラカゼットが押し込んでのゴール。
ティアニーのクロスの精度とそれに合わせたラカゼットが素晴らしかったのは間違いないのですが、このシーンもしっかりとエリア内に人が走り込んだ点も見逃せません。
ラカゼットに人数を割いていたらマイナス気味にポジションを取り直したスミス=ロウが浮いていましたし、WBAはあれ以上対処のしようがなかったでしょう。
つまり、
・競り合わなくても合わせられるクロスを入れる
アルテタの言いたかったことはこの2点なのではないでしょうか?
顕在化しなかった課題
今回の試合では問題にならなかったもののいずれ問題になるであろう要改善の課題がありました。
今後、チームとして改善が必要な課題はこれでしょう。
この試合でもダブルボランチ(特にセバージョス)が2トップの前まで下りてきてボールを受けるシーンが目立ちました。
ボランチが2トップの前まで下りてきてボールを受けることがなぜダメかというと、受け方として、2トップの前まで下りてきて、後ろ向きでボールを受けようとするからです。
これが、クロースロールやアンカー落ちのようにしっかりおり切って前を向いた状態で受けるならまだいいんですが、後ろ向きで受けると、2トップに背後から強く当たられてボールロストするリスクが高まるからです。
この試合ではそうやってプレスをかけたWBAの選手をかわして持ち上がったところからチャンスを作っていましたが、毎回きれいにかわせるとは限りませんし、失った時のリスクが大きすぎます。
特に、上位陣との対戦ではそのミスが致命傷になることが十分にあり得ます。
前プレスの背後でボールを引き出すことができれば、セバージョスの持つ技術をより有効活用できますし、それはエルネニーにはできない「セバージョスの持ち味」です。
オーバメヤンの問題はもう本人のメンタル的なところにあると思いますし、あとは本人がどう乗り越えるか、周りがそれをどうサポートするかにかかっているでしょう。
スパシーバ、ここまで読んでいただきありがとうございました。
エジルに見惚れてグーナーになった人。18/19シーズンから戦術ブログを開設してリーグ戦全試合のマッチレビューを投稿している戦術系グーナーです。