【マッチレビュー】EL準決勝1st legビジャレアル対アーセナル~所々ちぐはぐな試合~
絶対に負けられない戦いがそこにある。
リーグ戦からの欧州カップ戦への道が閉ざされたアーセナルにとってEL制覇は至上命題となっています。
そして、EL準決勝でアーセナルに立ちはだかるのはアルテタの前任者でEL番長のエメリが率いるビジャレアルです。
このEL準決勝はエメリと過ごした1年半、そして別れを告げたことが間違いでなかったと証明するためにも絶対に負けられない180分間になっています。
そして、その前半90分間である1st legはビジャレアルのホーム、エスタディオ・デ・ラ・セラミカで行われます。
そんなEL準決勝ビジャレアル対アーセナル1st legのマッチレビューです。
ビジャレアル2-1アーセナル
もくじ
両チームのスタメン
エヴァートン戦から中5日で迎えたこの試合はスタメンの入れ替えは1人にとどまりました。
4~6週間の離脱と言われていましたが、試合前には復帰もささやかれていたティアニーはベンチ外だった一方、マラリアから復帰のオーバメヤン、膝の手術明けのダビド・ルイスはベンチ入りをしています。
エヴァ―トン戦で途中出場で復帰を果たしたウーデゴールはスタメン復帰、ストライカー不在の11人でしたがスミスロウが0トップの役割で1トップの位置に入るようです。
バルサ戦から中4日で迎えたこの試合、スタメンの入れ替えは1人にとどまりました。
アルベルト・モレノに代わり、WGまで務めたりするペドラサが左SBのポジションに入っています。
元アーセナルのコクランは開幕前にパレホとともにバレンシアから加入し、シーズン序盤は主力としてプレーしていましたが負傷離脱以降は序列を下げ、この試合もバルサ戦もベンチスタートになっていました。
ちぐはぐな前プレス
アーセナルの前プレスの形はスミスロウがCB間、WGがCBからSBへのコースを抑える外切りのコースカットプレスでプレッシャーをかけ、ウーデゴールがパレホを監視する形をさいようしていました。
しかし、ビジャレアルの先制点のシーンではGKのルジがボールを持ったところでスミスロウは横からプレッシャーをかけ、サカもパウ・トーレスとペドラサの中間ポジションに立ち、プレッシャーに行ける状況でした。
そこでパレホがスピードを上げ、降りてきてルジからのパスを引き出しワンタッチでペペの背後のフォイスに展開、フォイスがドリブルで持ち上がり、大外のチュクウェゼに預けるとチュクウェゼのドリブルに対してアーセナルの守備陣は後退していき、エリア内でジャカとセバージョスで挟み込むもこぼれ球を左から流れてきたトリゲロスがダイレクトでシュートにつなげ、ゴールを奪いました。
まず、右CBのアルビオルからGKのルジにボールが渡った時にペペがふらふらっと前に出てきてしまいました。
GK→SBのパスコースには立っていましたが、パレホ経由で展開され、フォイスの前方に広がるスペースへのドライブを許してしまいました。
いくら強めに行っても後ろから当たる形ではワンタッチでの展開はある程度覚悟しなければなりませんし、スミスロウもCB間をカットするため前に出ているため、プレスをはがされると後ろのスペースを使われるためWGはコースカットプレスで前に出るのではなくSBのマークにつき、前プレスの狙いとしてサイドに誘い込むべきでした。
しかし、サイドと中央で前プレスがちぐはぐになった結果、浮いているSBがパレホに当ててからの展開やGKからの浮き球パスで有効活用される形になっていました。
明確な修正とはいきませんでしたが、前半の途中から少しマシになったのは、スミスロウもボランチへのコースを限ケアする側に回れたことと、浮いているSBに対してはフォイスにはセバージョス、ペドラサにはチェンバースが出ていくことで前進に待ったをかけることができるようになった点です。
ですが、後方ではジャカはチュクウェゼにピン留めされて身動きが取れないですし、2CBは2トップの対応、トーマスは内側に入ってきてパスを引き出そうとするトリゲロスへの対応に苦戦していてチーム全体が前から行く構造になっていなかったのは痛手でした。
スミスロウ0トップの狙い
ラカゼット、オーバメヤンが復帰間近ですが、コンディション不透明(特にオーバ)という状況で、エンケティアも昨シーズンと比べると信頼されているようには見えません。
トップチームでの実績が皆無のバログンをここでいきなり抜擢するような大博打をアルテタはしません。
誰が1トップに入るのかと思われましたが、スミスロウの0トップというこれまで全く試してこなかった奇策に打って出ます。
正直、ペペの1トップが見たかったので少し残念でしたが、両WGに入るペペとサカは裏も狙える選手ですし、スミスロウもオフザボールの動きに長けているため、機能するとは思いました。
では、なぜ上手くいかなかったのかというと、ビジャレアルが敷いてきたかなりコンパクトな4-4-2で高めに設定されたDFラインを押し下げる術をチームとしてあまり持っていなかったです。
ぺぺやサカは裏を狙うシーンはありましたし、あわやPK獲得や相手のファールを誘うなど形としては成立していましたが、最終ラインからのパスの供給がほとんどだったため、ビジャレアルにDFラインを下げさせるには至りませんでした。
この試合でビジャレアルのDFラインを押し下げることができたのはペペの大外からの仕掛けだけに思えました。
それから、スミスロウのライン間でボールを引き出す動きは良かったですが、裏を狙う動きが少なく感じました(そもそもそんなスペースがなかったけど)。
そのため、0トップの利点を生かせるほどのスペースがライン間になく、外からのクロスに対してもラカゼットのような本職のストライカーと違いターゲットになれないため0トップのデメリットが目立ってしまった印象です。
ですが、ビルドアップへの貢献では一定の役目を果たしていたため、全くの機能不全だったとは思いません(機能したかしてないかでいえばしてないに寄りますが…)。
ビジャレアルの守備
ビジャレアルの前半の守備はかなりコンパクトな4-4-2で、前からのプレスに出てきました。
基本的には、パスが入ったとこに寄せる、パスが入ったとこに寄せる、これを繰り返している印象です。
奪いどころを決めていないため、選手も疲弊しやすいですし、実際アーセナルでの末期はこんな感じのプレスをやってた気がしますし、当時はエメリの求心力も地に落ちていたため目も当てられない状況でした。
ですが、今回のビジャレアルが前半このプレスでも機能していたのはインテンシティとコンパクトな陣形のおかげでしょう。
高い強度でプレスをかけることで、アーセナルのボール保持に余裕を与えず、コンパクトな陣形にすることで奪いどころが無く、後手に回りそうなプレスでもプレスがはがされないようにしていたため、アーセナルは苦戦を強いられました。
しかし、エメリはHTにパコ・アルカセルを下げてコクランを投入し、右IHに配置しました。
ボール奪取に長けたコクランを2列目(2.5列目)に投入、中盤の厚みを増し後方でのボール奪取力を上げてボール保持につなげるという点では一概に逃げ腰と言い切ることはできません。
しかし、前半はハイライン・ハイインテンシティのコンパクトな4-4-2が守備が機能していたのにそれを放棄、おそらく90分は持たないとの判断でしょうが逃げの一手が早すぎましたね。
結果、アーセナルは最終ラインにはボール保持のゆとりが生まれ、ビジャレアル陣内に押し込み攻撃の時間が増えました。
ライン間にもスペースが生まれ、サイドと中央の崩しが機能し始め、ここからっ点を返していけそうな流れになりました。
まぁ、その流れの中でセバージョスへのパスがずれ、タックルに来たパレホの足をセバージョスが踏んでしまい2枚目のイエローを貰ったのは不運でしたが…
まとめ
セバージョス退場後直後からもアーセナルは前からプレスをかける姿勢を変えずに戦い続けます。
その結果、前プレスをはがされたところから決定機を作られました。
あれをジェラール・モレノに決められていたら文字通り終戦でしたし、追う必要のないリスクでした。
ただ、その後PKで1点を返してアウェイゴールを奪うことに成功、2-1で敗戦したとはいえ、2nd legに望みはつながる試合結果になったのは前向きにとらえられます。
そして、オーバメヤンも無事復帰を果たし、ラカゼットとティアニーの復帰も間に合えばさらに追い風となるでしょう。
ニューカッスル戦+ビジャレアル戦2nd legに向けて
ダビド・ルイスはすでにベンチ入りしていますし、ティアニー、ラカゼットの復帰が間に合えばぜひとも起用したいところです。
けが人が復帰すればスカッド的な問題は快勝するというのも追い風ですが、エメリの後半の采配を見ているとビジャレアルにとってのアウェイゲームとなるエミレーツでの2nd legでエメリが日和った采配をする可能性もあります。
楽観視できる現実はどこにもありませんが、まだまだ悲観するような惨状じゃないことは確かです。
2nd legで底力を見せて決勝にコマを進めてほしいですね。
ニューカッスル戦は試合勘を戻しておきたいオーバメヤンとダビド・ルイス、それからGKのレノ以外は控え組を起用してほしいくらいです。
それからニューカッスル戦のもう1つの注目ポイントはアーセナルからニューカッスルにレンタルされているウィロックです。
アーセナルに残留するためには絶好のアピールの舞台になるでしょう。
ペペの1トップ案
サカも0トップはできるでしょうが、やはりぺぺの1トップが見てみたいですね。
身長とフィジカル的な強さもあるため、CBと競り合うことも可能ですし、もちろん裏を狙う動きもできます。
そして、サイドに流れた所からの突破も可能になります。
その場合、2列目は左サカ、トップ下スミスロウ、右ウーデゴールになり、サカが左で幅を取り、右はスミスロウとウーデゴールが近い位置で連携して崩す形になるでしょう。
と、まぁメリットばかりのように見えますが、欠点もあり、特に守備の際にそれが目立つと思います。
ペペは時折素晴らしいインターセプトを見せますし、守備を頑張ろうという気概も最近では見られますが、質の高いプレスを90分継続してできるかと言われればその質はスミスロウの0トップと比較しても劣るでしょう。
スパスィーバ
エジルに見惚れてグーナーになった人。18/19シーズンから戦術ブログを開設してリーグ戦全試合のマッチレビューを投稿している戦術系グーナーです。