【マッチレビュー】アーセナル対ニューカッスル・ユナイテッド~王者として迎えるFA杯~
前回大会王者として臨むアーセナルの今シーズンのFA杯がついにスタート。
3回戦の相手は同じプレミアリーグのニューカッスル・ユナイテッド。
アーセナルは控え中心のメンバーがどれだけ存在感を発揮できるのか注目したい所だ。
アーセナル2-0ニューカッスル
もくじ
両チームのスタメン
アーセナルは、直近のプレミアリーグWBA戦から7人を変更した。
ダビド・ルイス、ウィリアンは体調不良から復帰、セドリック、ペペ、ウィロックは久しぶりのスタメン出場だ。
また、メンバー発表時はマルティネッリがスタメンでしたが、ウォームアップ中の負傷で急遽ネルソンが左WGでスタメン出場。
サカ、スミスロウがベンチスタートな一方、ここまでフル出場が続くティアニーが少し不安である。
ニューカッスルは、直近のプレミアリーグレスター戦から同じく7人を変更してきた。
注目はやはりかかとの負傷での離脱から復帰を果たした守護神ドゥブラフカだ。
当初の復帰予定からかなり後ろにずれ込みましたがついにニューカッスルの頼れる守護神がついに帰ってきた。
両チームの二次配置
アーセナルのボール保持時
4-2-3-1からの可変ですが、今日の注目ポイントは2列目の控え組とボランチに入ったウィロックだ。
ネルソン、ペペはそれぞれマルティネッリ、サカの役割を引き継いで斜めの動きで裏を狙い、外からの仕掛けで存在感を発揮。
一方、ウィリアンはスミスロウと違い、左サイドで高い位置を取るティアニーとネルソンの背後で内外でポジションを取り、サポートしていた印象だ。
そして、ウィロックはボランチの位置から高い位置に流れ、右ハーフスペースでの走り込む役割だった。
ショートパスでの崩しがメインでありながら時折見せるルイスのロングフィードが脅威なこともあり、ニューカッスルは全体として低いライン設定でのプレーを強いられた。
ニューカッスルは本職はMFのヘイデンが最終ラインに加わり5-4-1で低く守る戦い方を選択してきた。
前からプレッシャーをかけるのはワントップのアンディ・キャロルだけだった。
ニューカッスルは低いライン設定でしたが、最終ラインが統率しきれておらず、そのズレからルイスからのロングフィードで窮地に陥る場面がいくつからあった。
キャロルのプレスに合わせて全体で押し上げたり、SHやボランチも前プレスに参戦した方がいい戦いができたのでは?とも思った。
ニューカッスルのボール保持時
ニューカッスルはかなり後ろ重心で、攻め手が少なかった印象でした。
ニューカッスルにとって痛手だったのはドリブルで独力で距離と時間を稼げるサン=マクシマンの不在でしょう。
本来CFに入りターゲットマンになるべきジョエリントンがプレミアリーグ第16節リヴァプール戦から3戦続けて左サイドでの起用となっている。
そのジョエリントンンとCFのキャロルがターゲットマンとなり、最終ラインやロングスタッフからのロングフィードのターゲットマンになっていた。
試合終盤にはロングカウンターからの左サイドからのクロスで最後はキャロルの決定機を迎えていましたが、レノの見事なシュートストップとその後の対応で失点を免れました。
2列目トリオ主力と控えの差
マルティネッリとネルソン
マルティネッリの負傷により急遽出場することになったネルソンは守備時はSB→CBにしっかりプレスをかけ、攻撃時も左から斜めの動きで裏を狙ったり、ハーフスペースで受けてからのドリブルの仕掛けなどある程度仕事はこなした印象はある。
ただ、突出したプレーも少なく代役止まりなことと、プレー判断(特に、エリア内でシュートを打つまでの判断)には改善の余地があった。
スミスロウとウィリアン
守備のタスクはスミスロウと同等の仕事をウィリアンはしていた。
中盤へのパスコースを切る寄せ方で、相手のビルドアップを阻害する形はとれていた。
しかし、攻撃面ではウィリアンはスミスロウにはだいぶ及ばなかった。
同じ65分間の出場でそれぞれウィリアンはボールタッチ数41、パス本数30(25)本、クロス本数5(1)本、ロングパス本数1(0)本に対し、スミスロウはボールタッチ数46、パス本数29(25)本、クロス本数1(0)本、ロングパス本数1(0)本であった。※()内は成功数
このように、データ上はそれほど差が無いが、試合中の位置取りが大きく違った。
ウィリアンは左サイドの2つのレーンで多くの時間を過ごした一方、スミスロウは中央の3つのレーンでプレー、よりゴールに近い位置での仕事となった。
位置取りは与えられたタスクもあるが、この2人で決定的に違うのは動き出しの量だ。
スミスロウはゴールシーンがそうであったように、オフザボールの動きで相手を動かし、足元より少し前で受けようとする一方、ウィリアンは足元で止まって受ける場面が多かったように感じる。
悪かった時のアーセナルでは全員が足元で受けようとし、サポートに動かないせいでチームそのものが静的な状態に陥っていたように感じる。
サカとペペ
ペペはサカにはなれないが、今日スタメンで出場した3人の中で最も自分の武器をアピールできていた。
一方、致命的に足りない部分も露呈した。
まず、大外からのドリブルでの仕掛けとミドルシュートで存在感を発揮していた。
サカは結構早めにトップスピードに乗ってドリブルできる一方、ペペはトップスピードに乗るまでに少し時間がかかる印象はあるが、トップスピードに乗った時のぺぺはそれこそ手が付けられない代物だ。
サカより、活きる場面は少ないかもしれないが、使い方さえ考えれば十分に輝くと言える。
32分のシーンはペペの強みと弱点が同時に出ていたシーンだ。
オーバメヤンにボールを預けて斜めに抜け出すとオーバメヤンがそこにリターン、エリア内にペペは侵入し、突破を試みるもヘイデンに阻まれてしまった。
この時、エイデンと相対して仕掛ける時に中でネルソンとウィリアンが折り返しを受けられる体勢でしたが、突破を試みて失敗していました。
このシーン、折り返すとしたら右足での折り返しになりますが、ペペはあまり右足を使いたがらない節があります。
ここがサカとの決定的な違いだ。
サカは左利きですが、右足でのキック精度もいいのはそうですが、その姿勢がペペとは大違いだ。
チェルシー戦でのスーパーゴールは右足でしたし、WBA戦の3点目の起点になったクロスも右足だった。
特に、WBA戦の3点目のシーンは多少強引に行けば中にカットインをして左足で狙うこともできたかもしれない。
しかし、サカは縦に突破して右足の方が有効だと判断したら即座にそちらを選択できる選手である。
ペペは、延長12分にも裏への抜け出しから決定機を迎えた。
パブロ・マリからの素晴らしいロングフィード、ペペも一瞬後ろに下がってからの抜け出し、これも見事だった。
しかし、抜け出してエリア内でのボールタッチは明らかに右足を使いたくなさそうな雰囲気だったのと、縦ではなく1人はがしても2人目が待機していた中に強引に仕掛けていた。
スペースへの抜け出してからの右斜めに侵入する形はペペの得意とするところだが、そこで武器になるのが左足オンリーで右足を相手の思考にはさめないボールの持ち方と右足のクオリティ。
右足の精度と使おうとする姿勢がペペに足りないものだと感じた。
ペペ<<<<ネルソン<<ウィリアン
ペペが自身の強みを打ち出して、存在感を発揮した一方、代役止まりで自身の強みを出せずに終わったネルソンとウィリアン(特にウィリアン)は主力との差は大きいと言わざるを得ない。
3人目の動き
スミスロウの動き出しが輝いたのが先制点のシーン。
その前に、スミスロウとサカの守備対応の良さにも触れよう。
サカがライン間で受けて浮き球のパスを出すもインターセプトされる、その時サカはすぐに、インターセプトしたダメットからアンダーソンへのパスコースをふさぐと、スミスロウもロングスタッフへのパスコースをふさいだ。
ダメットは出しどころを失い、少し持って焦って出したパスをスミスロウにカットされた。
ここからはスミスロウの動き出しについて。
サカが持った瞬間、スミスロウはダメットの背中側から裏へ動き出した。
サカからラカゼットへの浮き球パスに対して、スミスロウはラカゼットからの落としを想定してか少し右に流れて裏を狙った。
そして、ラカゼットからの落としを受けてスミスロウが最後は右足で沈めて先制ゴールだ。
結構頻繁に言っているが、このボールホルダーを追い越す動き出しこそアーセナルらしさを表していると思う。
このシーン、もちろん、サカの浮き球パスとラカゼットの落としも素晴らしかった。
並大抵のプレーじゃないことは一目瞭然だし、状況がカオスだったこともスミスロウがフリーで抜け出せた要因かもしれない。
しかし、スミスロウはこの一連の動きで相手がボールと自分を同一視野に捕らえられないようなコースを走っているように感じたし、それもフリーで抜け出せた要因の1つかもしれない。
苦しみながらもFA杯4回戦進出だ。
スミスロウの判定に関しては九死に一生を得たような感じだろう。
何はともあれ、今は結果が出ることが選手の自信にもつながるのでこのまま1月は連勝街道を突き進んでほしい。
スパシーバ、ここまで読んでいただきありがとうございます。
エジルに見惚れてグーナーになった人。18/19シーズンから戦術ブログを開設してリーグ戦全試合のマッチレビューを投稿している戦術系グーナーです。