【マッチレビュー】アーセナル対マンチェスター・シティ「チームと監督の若さ」
アーセナル1-3マンチェスター・シティ
もくじ
両チームのスタメン
アーセナルは前節ブレントフォードと引き分けたところからスタメンを2人変更してきた。
トーマスが負傷したため、代役としてジョルジーニョがアーセナルでは初スタメンとなった。
また、右SBはホワイトに代わって冨安がリーグ戦ではW杯の中断前の10月30日のノッティンガム戦以来のスタメンとなっている。
ホワイトは前々節エヴァートン戦がコンディションの底のように感じたが、前節は復調の兆しを見せた中でのスタメン変更となったが、おそらくシティ戦でいきなり起用しても冨安なら問題なくプレーできると判断して前節ブレントフォード戦ではホワイトを信頼して起用し、良い感触をつかんだ状態でミッドウィークは休ませたいという狙いがあったのだろう。
シティはアストン・ヴィラに快勝した前節からスタメンを1人変更してきた。
左CBのラポルテに代えてアケを起用、おそらく守備強度を優先しての変更だろう。
その一方でベルナルドの左SBは継続してきた。
オリジナリティの導入
アーセナルはここ数試合同様に左SBのジンチェンコがアンカー脇まで絞り、右SBの冨安はインサイドバックとSBを行き来できる立ち位置でスタート。
さらに、ジャカがジンチェンコの外に流れることが多く、3-3-4と2-4-4を行き来するようなビルドアップでスタートし、敵陣に侵入するとジャカがいつも通りライン間に侵入し、冨安もサカ、ウーデゴールとのトライアングルを構築し2-3-5で崩しにかかる。
対するシティは両WGが中に絞る4-3-2-1の並びで中央は人につく守備で対応してきた。
ジョルジーニョとジンチェンコはマークされながらも中央で相手を引き付けてレイオフで外の冨安とガブリエウに落として2人のキャリーで前進する形を整えられていたのでシティの序盤のプレスをアーセナルは回避することに成功した。
この時、ジョルジーニョは低い位置でのポジショニングが良いことは当然だが、そこからボールの前進に合わせて外から中へのリターンを常に受けられる位置に移動し続けてその中で冨安やウーデゴールへも指示を飛ばし続けていた。
さらに、ジョルジーニョがクロースロールで1列落ちて冨安に上がる可変も披露。
ジョルジーニョが1列下がることでグリーリッシュが釣り出されそのスペースにウーデゴールが降りてくる。
ギュンドアンもそこを潰しに行きたいが出て行きすぎるとライン間ががら空きになるからかあまり強くは来れず、ウーデゴールがボランチの位置で前向きにボールを持つ回数が増えた。
また、冨安が高い位置を取ることでサカがよりゴールに近い位置で仕掛けられるようになり、さらに試合のペースを握るようになる。
攻撃のための守備
シティは前節のアストン・ヴィラ戦同様に左SBのベルナルドがロドリの脇に入る形で3-2-5のビルドアップでスタート。
それに対してアーセナルは3トップ+2IHで数的同数をシティの3-2のビルドアップ隊にぶつける前からのプレスで、両WGは開いたシティの両インサイドバックに対して内から外に追い出すプレスをかけてIHがシティのWボランチをマーク、シティのWGにはSBがマークに付き4バック全てがボールサイドにスライドする前からのプレスで高い位置位置で引っ掛けてのショートカウンターを狙っていく。
エンケティアはルベン・ディアスにプレスをかけ、エデルソンに戻したらそのままエデルソンにもプレスに行っていた。
序盤はアーセナルが高い位置で奪ってショートカウンターに移行するシーンもあったが、時間経過とともにシティは最初は繋ぐ意志を見せてもリスクが高いと判断すると前線へのロングボールに切り替えることが増えた。
この時のターゲットは当然ハーランドで両サイドに流れながらの空中戦が多かった。
特に、サリバとのマッチアップが多く、前々節のDCL、前節のトニーに続き今節はハーランドとサリバには試練が続いている。
しかし、サリバはハーランドと対等に渡り合い空中戦5回中3回勝利、地上戦4回中3回勝利というスタッツを記録した。
だが、そんなサリバとハーランドの空中戦でハーランドのヘディングでサイドにこぼれたボールを冨安が回収して戻そうとしたパスが甘くなりデブライネがこれを回収して飛び出してきたラムズデールの頭上を通すループを決めてシティが先制に成功した。
グリーリッシュが詰めており冨安が内側を把握する余裕の無いまま戻したパスで生まれたミスでサリバもハーランドとの空中戦で前に出ていたため戻れておらず、近くに味方のいない状態だった。
攻撃のための守備的交代
アーセナルより1試合消化試合数が多い状態で勝ち点3差を追いかける2位のシティはアウェイでの勝ち点が是が非でも欲しいところだが、前半終了間際ジャカの浮き球パスに抜け出したエンケティアをエデルソンが倒してしまいPK献上、それをサカが決めて同点に追い付かれてしまう。
そんなシティは61分に右WGのマフレズを下げて左CBのアカンジを投入、ベルナルドを右WG、アケを左SBにそれぞれ移した。
WG→CBの交代で攻撃力が落ちるように思われるが、交代直後の61:18にいきなり右WGに戻ったベルナルドのインターセプトからチャンスを迎えると72分の2点目はガブリエウのパスをベルナルドがインターセプトしたところからのスルーパスでハーランドが抜け出すと飛び込んできたギュンドアンへ折り返す。
冨安も急いで絞って対応したがギュンドアンがフリックして大外からフリーで入ってきたグリーリッシュが流し込み勝ち越しに成功。
3点目も前からのプレスでウォーカーがトロサールを潰したところからベルナルドが回収したのが起点になっている。
また、ペップは前半の途中から守備の形をWGが中に絞る4-3-2-1からデブライネが1列上がる4-4-2に変更、それでも前半は押し込まれる時間も多かったが、後半に入ると前線からのプレスの強度を高め、さらにアカンジを投入して後方の対人の質による憂いを無くしてさらに強気なプレッシングに出てきた。
シティの3点目はペップの修正とその強気な4-4-2のプレッシングから生まれたものとも言えるだろう。
結果、前半はアーセナルのペースで試合が進んでいたが、後半は時間とともにシティペースの試合になってしまった印象だ。
また、シティは繋げないと見ると潔く前に蹴っていたが、それに対してアーセナルは繋ぐのが苦しくなっても後ろから繋ぎ続けて、結果として2失点のシーン以外にも高い位置で奪われてピンチになる場面もあり、チームとしての若さが少し出たのかもしれない。
おわりに
終わってみれば1-3の完敗、前半は内容的に勝っていたが結果は結果として受け止めなければならない。
それから、決定機を決めきれなかったアーセナルとチャンスを逃さなかったシティの差が出てしまった印象だ。
ここ2試合と違い、真っ向から殴り合って勝ち点を落としたのだから、たとえ失点がミスからのものだったとしても真摯に受け止めるべきだ。
そして、その上でまた次節から勝ち点を積んでいかなければならない。
アーセナルは7節の延期分のエヴァートン戦を残しており、わずかだが勝ち点勘定としては優位だ。
しかし、優勝のために勝ち点を取りこぼさないことと同じくらい避けては通れないのがシティ相手のシーズンWの回避だ。
4月に残しているエディハドでの対戦は最低でも引き分け、優勝のためには勝利が欲しい1戦となる。
そして、4月のエディハドを優勝を手繰り寄せる1戦にするためにはここから余分な取りこぼしは一切許されない戦いとなるが、アーセナルの選手たちには頑張ってほしい。
エジルに見惚れてグーナーになった人。18/19シーズンから戦術ブログを開設してリーグ戦全試合のマッチレビューを投稿している戦術系グーナーです。