【マッチレビュー】バーンリー対アーセナル~ハンドってなんだっけ?~
ベンフィカ戦、レスター戦と続けて見事な逆転勝利を飾り、この後に控えているオリンピアコスとのELラウンド16とその間にあるスパーズとのノース・ロンドン・ダービーを控えています。
なので、ボトム6のバーンリー相手に勝利して勢いに乗った状態でこの後の山場を迎えたいところです。
そんなこんなで迎えたプレミアリーグ第27節バーンリー対アーセナル。
ターフ・ムーアでの1戦になります。
ちなみにこの試合の主審のアンドレ・マリナーはかつてBLDでチェンバレンとキーラン・ギブスを間違えてレッドカードを提示した主審としても知られています。
バーンリー1-1アーセナル
もくじ
両チームのスタメン
グズムンドソンが負傷から戻ってきました。
ニック・ポープ、タルコウスキ、ベン・ミーの3人がそろった時のバーンリーは途端に難攻不落になります。
昨シーズンに前十字靭帯断裂の大けがで長期離脱したチェンバースがついにプレミアリーグで復帰を果たしました。
チェンバースはアルテタ政権では初スタメンになります。
前節で負傷交代したスミスロウは今節もお休みということでウーデゴールがスタメン出場になりました。
ELに向けて主力を温存して勝ちに行くかに思われましたが、主力も起用してきたのは意外でしたね。
両チームの二次配置
アーセナルのボール保持時
アーセナルのビルドアップは普段のジャカのクロースロールとトーマスが中盤に残るひし形がスタート。
それに対してバーンリーは4-4-2で前から行く時もMF-FWの4-2がそのまま前にスライドしてくる形でした。
そのため、バーンリーの2CHの脇にそれぞれウィリアンとウーデゴールが下りてきてパスを引き出す形が目立っていました。
トップ下でスミスロウの代役を務めるウーデゴールですが、中盤のラインの背後で動き回って楔のパスを引き出すスミスロウと違い、中盤のラインよりも前に降りてくる頻度が高いのは特徴です。
正直、褒められた動きではありませんが真後ろを向くのではなく半身でパスを受けてスムーズに前を向けるような態勢を取れていることは評価できますね。
ウーデゴールとウィリアンが下りていく代わりに、右はサカが大外からハーフスペースに、左はCFのオーバメヤンが中央からハーフスペースに流れることで高い位置に人がいなくなるということは防げていました。
大外は両SBが幅と高さを取っていました。
チェンバースは崩しの段階で大外でのランニングとクロスの質は光るものがありましたが、ビルドアップ時の幅を取った時の位置がティアニーと比べて低かったのは今後への改善点でした。
バーンリーのボール保持時
バーンリーの攻撃は最終ラインからクリス・ウッドやヴィドラにロングボールを当てて落とすのがスタートです。
そこからの崩しの展開は2トップの連携で中央から崩すかサイドにはたいて2トップはエリア内に入って行きSHやSBからのクロスを待つ形が崩しからっフィニッシュにかけての主なプランでした。
空中戦(Aerial duels)ではダビド・ルイス7回中6回勝利、パブロ・マリ9回中7回勝利でクリス・ウッド11回中3回勝利、ヴィドラ10回中1回勝利でアーセナル側が優位に立てていたため、バーンリーに好きかってやられなかったと言えます。
しかし、クリス・ウッドにしっかり収まった所からの崩しや展開ではバーンリーもチャンスを作れており、完全にシャットアウトできたわけではありませんでした。
バーンリーのビルドアップはSBがビルドアップの際にあまり高い位置を取らないので、アーセナルのWGはコースカットプレスではなく、CBからの縦パスを警戒できる位置からSBにボールが入れば一気に寄せる守り方を採用していましたね。
そして、ウーデゴールとオーバメヤンは前プレス時は縦関係ではなく横並びで2CBにプレスをかけていました。
ウーデゴールは貴公子って感じの見た目で守備しなさそうですが、だれよりも泥臭く守備に奔走しながら、味方にプレスの指示も飛ばせる良い選手です。
マドリーでの開幕戦とはまるで別人ですね。
先制点までの流れ
先制点のシーンは2トップによる前プレスをトーマスとジャカとのワンツーではがして置き去りにされた後はエリア内への侵入を許すまでアーセナルにほとんどノープレッシャーで前進を許してしまったのはまずかったですね。
アーセナルはトーマスとジャカのワンツーで2トップのプレスをはがすと、バーンリーの中盤が前に出て、ウィリアンがバーンリーの中盤の背後でパスを受けます。
そこからはバーンリーの最終ライン4枚は中央に絞りますが、ウィリアンがドリ部づで持ち上がるのに対してずるずると後退。
オーバメヤンがペナルティエリアの角でウィリアンからのパスを受けると“オーバメヤンゾーン”(デル・ピエーロゾーン)から仕掛けてニアを打ち抜く見事なゴールを決めました。
失点の原因はなんだったのか…?
幸先よく先制した後はいくつかの決定機を迎えるも決めきれずにスコアは1-0のまま前半も終盤を迎えました。
主導権を握っている時間でチャンスを作るものがしてたらいつの間にか相手に点を取られてしまう…アーセナルで幾度も見た光景です。
38分、GKレノからのパスを受けたジャカにはヴィドラが後ろからついており、ジャカはルイスにつなごうとしたところ右足でのキックがずれてクリス・ウッドに当たり、そのままゴールに吸い込まれてしまいました。
この失点を低い位置からつなぐサッカーをする上での税金みたいなものという人もいるでしょう。
ですが、それは少し違います。
明確なミスキックが直接の原因ならば、確かにそれは税金のようなものですが、ポジショニングのミスは修正が可能です。
もちろん、失点の原因はジャカの右足でのキックミスととらえることも可能ですが、このシーンではキックミス以前にポジショニングのミスがあったと言えるでしょう。
ジャカがまずかった点はパスを受けるために降りてきすぎてしまったことです。
クリス・ウッドがダビド・ルイスとのパスコース上に立てる位置までジャカが下りてしまったことが原因でした。
それから、ワンタッチではたくべきところを余分なタッチを挟んでしまったという側面もあります。
ジャカとチームの解決策
レノがあの場面で大きく蹴り出すべきというのはミスを防げはしますが、前向きな解決ではありません。
レノ自身がやばくなったら蹴り出すという選択肢を頭にとどめておくのは必要なことですが、ショートパスをつないでのこの状況の解決策を考えてみましょう。
まず、ジャカはエリア内まで下りていかずにレノからのパスを引き出すべきです。
そうすることで、クリス・ウッドがダビド・ルイスへのパスコースを切れない位置でパスコースの線を引くことでプレスを回避することができます。
それから、チームとしてはジャカの横にもう1人受けに行かせて、パスコースを用意してあげるのも選択肢として必要でしょう。
例えば、このシーンではジャカにはヴィドラがマークについていました。
そして、ブラウンヒルの両脇にトーマスとウーデゴールが立っていたため、そのどちらかがペナルティエリア手前まで受けに行くことで、レイオフでCBにつないだり、ターンして前を向けるためプレスの回避が可能になります。
これはGKビルドアップでひし形の頂点(アンカー)が抑えられたときにその両脇に人が下りていく状況とえられる効果は同じです。
後半停滞の理由とは
バーンリーは前半と比較して後半は2トップの前プレスがアーセナルの最終ラインがボールを持つことは許容している感じでした。
かわりに、2トップ(主にヴィドラ)がトーマス近辺に立ち、トーマスへのパスコースを封鎖することで、先制点のシーンのようなトーマスが中心になる中央からの前進に歯止めをかけていました。
また、トーマスを経由したビルドアップができなくなり、ウーデゴールとウィリアンがより下りてくるようになったことで全体が停滞してしまった印象です。
後半にラカゼットとぺぺをウィリアンとウーデゴールに代えて投入したのは降りてくるタイプの選手を下げて高い位置で仕事をする選手を入れることで全体を押し上げる狙いがあったのではないかと思います。
マイナスのスペースの有効活用
53分のチェンバースのクロスをサカが受けてシュートを放ったシーン
81分のティアニーのクロスにペペが合わせるもミートできなかったシーン
83分のサカがラカゼットとのワンツーで裏に抜け出して折り返しを入れてぺぺが右足で合わせるもピータースが肩でスーパーセーブをしたシーン
いずれもマイナス方向への折り返しでした。
クロスで守備側が入れられるのを最も嫌うスペースはDFとGKの間です。
ワンタッチで合わせるだけでゴールにつながりやすい危険なエリアだからです。
なので、裏を狙う選手のケアでDFは下がらざるを得ません。
そこで、そのDF陣の手前にスペースが生まれ、入ってくる選手はシュートが打ちやすくなります。
また、マイナス方向への折り返し(クロス)に対して、守備側はボールとマーカーを同一視野に捕らえることが困難なため、フリーの選手が生まれやすくなります。
これが、マイナス気味のクロスが有効な理由です。
この試合のアーセナルはしっかり崩せていましたが、惜しむべくは決めきることができなかった点です。
ELラウンド16オリンピアコス戦に向けて
アーセナルの次の試合は日本時間3月12日5時キックオフのELラウンド16オリンピアコスとの1st legです。
その次は同15日1時半キックオフのプレミアリーグ第28節スパーズ戦、NLDです。
スパーズはEL1st legはホームゲームな一方、アーセナルはアウェイゲームでギリシャ遠征になります。
その後、同19日3時キックオフのオリンピアコスとの2nd legを迎える過密日程になっています。
主力をELにぶつけ、NLDではターンオーバーをしつつ勝ちに行く感じでしょうか。
予想スタメンは図の通りです。
セドリック、マガリャンイスは休養もしっかりとれているためオリンピアコス戦でのスタメン復帰が予想されます。
また、ダビド・ルイスはここ2試合出ているのでバーンリー戦は脳震盪から復帰しベンチ入りしていたホールディングもスタメン出場するでしょう。
ティアニー、ジャカトーマスは継続してスタメン出場が見込まれます。
人材豊富な前線ですが、サカとウーデゴールは継続してスタメン出場を予想してます。
トーマスの一件以来、ケガからの復帰には万全を期しているアルテタならスミスロウはここでは無理せずにNLDかその次の2nd legで復帰させるのではないでしょうか?
ペペはここ数試合しっかりインパクトを残していますし、ラカゼットは今季リーグ戦はここまで9ゴールのうち7ゴールがアウェイゲームというアウェイでの強さを見込んでスタメンに予想しました。
まとめ
バーンリーとのこの1戦は何としても勝たなければいけない試合でした。
ハンドが2つ見逃されたせいでもらえるはずのPKが2つもらえませんでしたが、前後半でいくつか逃しちゃいけない決定機を逃しているのも事実です。
しかし、チェンバースの復帰のこの試合でのパフォーマンスは喜ばしいことでした。
今後はELに軸足を置きつつリーグ戦は6~7位フィニッシュを目指す形が良いと思います。
スパスィーバ
エジルに見惚れてグーナーになった人。18/19シーズンから戦術ブログを開設してリーグ戦全試合のマッチレビューを投稿している戦術系グーナーです。