【マッチレビュー】アーセナル対チェルシー~愛すべきヤンガナたち~
プレミアリーグ第15節アーセナル対チェルシー、昨年同様年末に迎えた #BigLondonDerby 。
リーグ戦直近7試合で2分5敗と苦しむアーセナルのホームにエヴァートン、ウルブズに2連敗を喫した後ウェストハムに勝利して連敗をストップし復調しつつあるチェルシーが乗り込んでの1戦だ。
アーセナル3-1チェルシー
もくじ
両チームのスタメン
アーセナルは前節からは6人、カラバオ杯からは8人の変更となっています。
マガリャンイスは新型コロナウイルス感染者との濃厚接触ということで自己隔離のため欠場、ウィリアン、ダビド・ルイスはそれぞれ体調不良で欠場だ。
一方、それぞれの出場停止が明けジャカとベジェリンはスタメン復帰を果たしました。
それから、スミス=ロウとケガから帰ってきたマルティネッリが今季リーグ戦初出場を果たしています。
対するチェルシーは前節からは2人の変更。
リース・ジェームスが2試合ぶりのスタメン復帰を果たしました。
また、負傷交代したチルウェルはこの試合に間に合ったようです。
両チームの二次配置
アーセナルのボール保持時
アーセナルのボール保持時の型は昨シーズン中断前の形の左右逆に近いものでした。
右はベジェリンが以前のハーフスペースに突撃する役割ではなく、大外を駆け上がるシンプルな役割に変化し、ハーフスペースで楔のパスを引き出す役割はサカが担っていた。
左はマルティネッリがサイドに張ったり、深さを作る役割でその外側をティアニーが使っていました。
スミス=ロウは左のハーフスペースで後ろからのパスを引き出したり、外からのボールにニアゾーンランでパスを引き出したり、オフザボールの動きで違いを見せていました。
しかし、カンテがスミス=ロウに引っ張られてかマンマークか左寄りに来ていたためそこで少し苦しんでいました。
チェルシーのボール保持時
チェルシーのボール保持時の型は4-1-2-3からアンカーのカンテとIHのどちらかが下りるかたちですが、この時にCBとの位置関係が2-2のボックス型になっていました。
それに対してアーセナルはラカゼットがCB間を切るように立ち、チェルシーの中盤3枚に対してはマンマーク気味についていき下りてく選手に合わせてスライドしていました。
この時、際立つのはスミス=ロウの巧さだ。
中央にボールがある時はカンテをマークして、サイドに流れた時はカンテへのコースを消しながらボールホルダーにプレッシャーをかけていました。
WGのタスクはSBを抑えてビルドアップの逃げ口を封鎖しつつ、CBにコースカットプレスをしかける役割で、サカもしっかりこなしていましたが、マルティネッリはそれ以上でした。
SB→CB→GKとパスが戻される時GKまで追って行っていましたし、ケガ明けとは思えない強度でプレスをかけていました。
アーセナルのプレスが見事に機能していたため、チェルシーはアバウトに蹴り込むしかなくなり、そこからの打開を試みていました。
その雑なボールでも収められるジルーが出ていたら厄介な存在になっていただろう。
ヤンガナ3人がもたらしたもの
メンタリティ
戦術的なことの前にまずはこれでしょう。
マルティネッリ、スミス=ロウ、サカが示した「闘う姿勢」はプレスやネガトラの強度に前面に押し出され、それに呼応するようにチーム全体が連動してプレスをかけられるようになり、攻撃時も全員でゴールに向かう姿勢を久しぶりに感じられました。
こういったメンタリティは戦術と同じくらいサッカーにおいて重要だと考えます。
ライン間での選択肢
この試合ではサカが右、スミス=ロウが左のハーフスペースでパスを引き出す役割を担っていました。
2人共、内側に侵入して、外の選手を使うこともできますし、中央に決定的なパスを刺すこともできる選手ですので、最近のアーセナルに多かったSBとの関係が外外になることで内側を使える選手がいないという問題を解消するのにベストな人選でした。
試合開始直後の内側でサカが受けて外を走るベジェリンを使い、ベジェリンのクロスにマルティネッリが合わせたシーンやサカが仕掛けてFKを獲得する前のパスを引き出してベジェリンに展開する形なんかは、わかりやすく内外が使えていました。
仮に外外の関係だったら、チェルシー側は視野が最初から外に向いているため、あの形でクロスを上げるのは難しかったでしょう。
今季ここまでラカゼットのプレー、特に相手を背負ってのポストプレーが活きてなかったのはラカゼットが受けてすぐ落とせる位置に味方がいない、またはクオリティが低かったからです。
昨季の中断前はエジルがそこでボールを受けていましたが、今季はそこに誰もいなかったり、いてもベジェリンでした。
ベジェリンは狭いスペースでの柔らかいボールタッチなどはあまり得意ではなくスペースがあるところで生きるタイプですので、プレーがぎこちなくなっていました。
それがこの試合では、サカがラカゼットの落としを近い位置で受けた所からもチャンスになっていました。
また、ラカゼットのフリックをマルティネッリが受けて抜け出す形もありました。
GKビルドアップからの得点
3点目はGKからのビルドアップでチェルシーの前プレスを食いつかせてからの縦パスで加速させて敵陣に侵入して崩し切る形のゴールで、このGKからの崩しでのゴールは3節リヴァプール戦以来でした。
このシーン、ビルドアップもですが、サカのゴラッソ、この一言に尽きます。
もちろんあのシュートもですが、その手前です。
ベジェリンがスミス=ロウに渡して一気に裏へ走るとそれにチアゴ・シウバとジョルジーニョが釣られてエリア手前にスペースが生まれました。
そこにゆっくり入って行ったサカとそこに置くようにパスを出したスミス=ロウ。
お互いに同じ画が描けていたからこそ生まれた形でしょう。
ジョルジーニョで打開を試みるも…
ジョルジーニョ投入でbox型ビルドアップでなくなり、可変で3バックを作れるようになり、前半よりもボールが回るようになったチェルシー。
ですが、他の選手のボール回しのテンポが遅いため、アーセナルの選手のスライドが追い付いてプレスがはまり、結局前に蹴っていたため、それをやるならジルー投入が最善手だろうと思いつつ、ジルーが投入されずこちらとしては助かったという印象でした。
エミール・スミス=ロウ評
今季プレミア初出場で今季初アシストを記録したスミス=ロウ。
足元の技術やボールを引き出す動きのセンスやパスのクオリティどれをとっても周りと全く見劣りしないどころかスミス=ロウの方が勝っている要素もあるまで感じました。
それから、不安視された(というかしていた)守備強度も全く問題なく、コースの切り方はエジルのように的確でしたし、エジル以上に泥臭い守備もできていたとも思いました。
ここから年末年始は過密日程ですが、ここから4-2-3-1を使うなら毎試合起用してもいいと思うレベルのクオリティを見せてくれたと思います。
スパシーバ、ここまで読んでいただきありがとうございました。
エジルに見惚れてグーナーになった人。18/19シーズンから戦術ブログを開設してリーグ戦全試合のマッチレビューを投稿している戦術系グーナーです。