【マッチレビュー】アーセナル対マンチェスター・シティ~今度はアルテタが対策するターン~
アルテタアーセナルとペップシティの顔合わせは今回で5回目。
初対戦はコロナ禍の中断開け1試合目、D.ルイスのやらかしと退場もあり、0-3の惨敗でした。
2度目の対戦となったFA杯セミファイナルでは2-0で撃破。
可変3-4-3でシティを抑え、見事なGKビルドアップからの得点で先制、その後追加点も入れての勝利で、アルテタの手腕を世界に知らしめる勝利でした。
しかし、3度目の対戦ではペップがアルテタアーセナル対策を万全に敷いてきたこともあり0-1と惜敗。
カンセロロールなどをやり始めたのもこの試合でした。
4度目の対戦はカラバオ杯準々決勝、これは1-4の惨敗、これは見なかったことにしましょう。
プレミアリーグ第25節アーセナル対マンチェスター・シティ、アルテタとペップ5度目の対戦です。
アーセナル0-1マンチェスター・シティ
もくじ
両チームのスタメン
アーセナルはELベンフィカ戦1stレグから5人を入れ替えてきました。
スミスロウ、セドリックは最近休みなしだったので、ベンフィカとの2ndレグを見据えてのローテーションでしょう。
代わりにティアニーがニューカッスル戦以来8試合ぶりのスタメン復帰を果たしました。
一方、シティも前節のエヴァートン戦から5人の変更をしてきました。
デブライネがスタメン復帰、他はフォーデンやロドリがベンチスタート、これはCLのグラートバッハ戦を見据えてのローテーションでしょう。
両チームの二次配置
アーセナルのボール保持時
シティは守備時は4-3-3からデブライネが1列上がって4-4-2の形になり、4-2-4で前からプレスをかけるやり方を採用してきました。
両WGはSBをケアしつつ縦パスもケアできる立ち位置から外切りのコースカットプレスもできる立ち位置、2トップは最終ラインからボランチへのコースをケアしつつ縦パスを抑えに行ける立ち位置で、人よりもスペースを基準にした守備でした。
アーセナルのビルドアップはエルネニーが開いたCB間に降りてジャカが中盤に残る場合とジャカがティアニーの裏に降りるクロースロールをしてエルネニーが中盤に残る2パターンを用意、エルネニーが下りる頻度の方が高かったです。
マリ、ジャカが球出し役になった左サイドはサカがハーフスペースに侵入しカンセロをピン留めしつつ縦パスを受ける、大外のスペースをティアニーが上がり、サカからのパスを受けてクロスを入れる攻撃は一番得点の匂いを感じる形になっていました。
サカはカンセロを背負ってからのプレーもよかったですが、だれが寄せるかあいまいな立ち位置で受けて前を向いてからの仕掛けも効果的でした。
一方、右サイドは左サイドに比べて苦戦を強いられた印象。
最終ラインで受けてから右に持ち上がることが多かったエルネニーですが、縦パスの判断、精度ともに悪く、ベジェリンも1タッチ2タッチで次の判断をしなければいけないエリアでタッチ数が増え、シティの選手に囲まれてロストが目立ちました。
ぺぺもサポートが少なく苦戦している印象でしたし、立ち位置同行の前に右サイドは左サイドに比べて状況判断、プレー精度の面で明らかに足りていませんでした。
マンチェスター・シティのボール保持時
攻撃ではシティ対策が完璧だったとは言えないアルテタのアーセナルですが、守備に関してはかなり成果を上げたのではないでしょうか。
開始1分16秒での失点こそありましたが、その後は変幻自在なシティの攻撃に対してゴール前に完全にバスを止めるでもなく対応しよく守っていたと思います。
シティはカンセロが中に絞り、ジンチェンコが最終ラインに残る3-2-5がこの日のベースでした。
シティのビルドアップ時3バックに対してはぺぺとオーバメヤンが2トップのような形になり外切りのコースカットプレスでWGへのパスコースを抑えつつ、時にはルヴェン・ディアスやGKのエデルソンまで追いかけていきました。
CBの持ち上がりに対してはある程度は許容しているような守り方でしたが、そこをついてディアスがバイタルエリアまで持ち上がったりし、それには苦しめられました。
カンセロロールに対してはサカが監視することで抑え、中盤に残るアンカーのフェルナンジーニョはウーデゴールが抑え、3-2-5の「2」」には数的同数で対応。
3-2-5の「5」は厳密には3-2で両IHと偽9番のベルナルドがライン間、両WGが幅を取りつつ最終ラインを押し下げる意図を感じました。
デブライネ、ギュンドアン、ベルナルドは中央の3つのレーンで循環しつつパスを引き出し、前を向くのでかなり厄介なものです。
それに対して、アルテタはジャカとエルネニーにそれぞれのハーフスペースに入ってくる選手のマークをさせ、前を向かせないようにしました。
完全なマンマークでは陣形がかき回されて生まれるスペースを使われるのが落ちだったと思われるのでこれは良い守り方だったと言えるでしょう。
そして、中央のレーンはCBが前に飛び出してシティの選手を捕まえに行きました。
CBが前に出ていくときは残りのCB1人でいいと判断したときはそのまま、まずいと判断した場合はCBが出ていったサイドのボランチが最終ラインまで下りてスペースを埋めるケアを怠らなかったことも評価できます。
撤退守備時でもあくまでもサカはカンセロの監視がメインタスクでした。
(カンセロが上がってこない時に限り普通の守備ブロックに加わる形。)
そして、ボールサイドのハーフスペースはボランチが最終ラインに降りて対応、両SBは大外でのWGとの1対1がメインで、ここは両SBの対応の差が如実に出たなというのが個人的な印象です。
勝機を見出せたとしたらどこだったか…?
そもそもでシュート数7、枠内シュート1でビックチャンスは0に終わり、開始直後の先制点が無くてもよくてドローでしょう。
アーセナルがシティ相手にチャンスを作るとしたらどこだったか…ワンチャンス賭けられたのはGKビルドアップからの展開ではないでしょうか?
25分のシーンはGKビルドアップではありませんでしたが、この展開で得た効果はGKビルドアップでゴールに近づける時と同じようなものだと感じました。
シティはこのシーン、ロスト後も即時奪回からのショートカウンターにつなげてましたが、それをかいくぐってサカ、オーバメヤンの落としからすぐに裏へ走るところに長いパスが通り、おそらくこの試合で一番いい形で敵陣への侵入ができたシーンだと考えられます。
この試合でのアーセナルのGKビルドアップはシティの前プレスをはがすことには成功してもそこからスピードに乗り切れない印象でした。
しかし、25分のシーンではショートカウンター→ロストが連続して起きたことでシティが前がかりになったこともゴール前まで綺麗に運べた理由の1つでしょう。
GKビルドアップに人数を割く関係上、4人か+αで前プレスの背後を前進するのに対して、シティは前プレスが基本前線の4人とギュンドアンも前に出てくるくらいで4バック+フェルナンジーニョが待ち構える上に、シティは前線の選手の帰陣の速さもリーグ随一なので少しでもパスがずれたらそこで止められてしまっていました。
また、FA杯のシティ戦で決めた時はエリア内でかなりの本数を回してからの縦に速く展開していましたが、この試合ではエリア内でそこまで多くの本数をつなぐシーンはありませんでした。
サカが下りてきてハーフレーンでパスを引き出せるシーンはありましたが、そこから前進してうまく敵陣に侵入できなかったのはもったいなかったですね。
まとめ
この試合、一番痛感したのはプレー精度と状況判断の大切さです。
アーセナル側はパスがずれてロストするシーンが多い(特に右サイド)一方、シティはそういった無駄なミスがほとんどありませんでした。
それから、状況判断に関してはシティは1タッチ2タッチの間に的確に判断しパスをさばけていましたが、アーセナルは持ちすぎて結果囲まれてロストするシーンが多かったです。
ペップとアルテタという両名将が策を練りぶつかり合っても選手の質でこうも決定的なものがあれば覆せないものというのも出てきます。
アーセナルが再びCL常連に返り咲くには多少のスカッドの整理が必要になるでしょう。
アルテタのシティ対策は守備はCBの持ち上がりに最後まで対処できなかった点を除けば十全に機能したと言えます。
一方、攻撃はサカがカンセロをピン留めしてその外をティアニーが使うところまでは良かったですが、もう一押し欲しかったところでしょうか。
スパスィーバ
エジルに見惚れてグーナーになった人。18/19シーズンから戦術ブログを開設してリーグ戦全試合のマッチレビューを投稿している戦術系グーナーです。