【マッチレビュー】アーセナル対ブレントフォード「開幕戦とは違う姿を」
アーセナル2-1ブレントフォード
もくじ
試合のハイライト
両チームのスタメン
数的不利になりながらも勝利を収めた前節ウルヴス戦からのスタメン変更は1人。
ウルヴス戦でわずか数十秒の間にイエローカード2枚をも例退場してしまい出場停止となったマルティネッリに代わりスミスロウがバーンリー戦以来2試合ぶりのスタメン出場だ。
スミスロウはここまでリーグ戦20試合に出場しているが、怪我によるプレータイムの制限とマルティネッリの好調の影響もありスタメンは14試合で1試合あたりの出場時間も66分と決して多くないが、その中でこの試合が始まる前の時点で8ゴールを記録しチーム内得点王となっている。
スコアレスドローに終わった前節クリスタル・パレス戦からのスタメン変更は1人だ。
とにもかくにもブレントフォードは得点力不足に苦しんでいる。
直近5試合で上げたゴール数は僅かに「2」。
そして、その2ゴールを記録したイヴァン・トニーもパレス戦から負傷離脱中という状況だ。
パレス戦からGKのラヤが復帰したと思ったら今度はエースストライカーが入れ替わるように離脱というツイてない状況である。
流動性を増す2-3-5
アーセナルはいつも通りの2-3-5だが、この試合は、より流動性が増していた。
ビルドアップ時は必要に応じてSBがCBの横まで下りてきて3バック化する他、両サイドのトライアングルのローテーションの多さが目立つ。
右サイドはセドリックが起用された前節のウルヴス戦からその傾向があったが、この試合では左WGにスミスロウが起用されたことで左サイドにも同様の現象が起きていた。
スミスロウが中に入り、ティアニーが高い位置に行く頻度が増えるだろうというのはスタメンを見て予想できたが驚いたのはジャカが大外に流れてその内側をスミスロウがフリーランをしてパスを引き出す動きや、それをおとりに中央にパスをするシーンが見られたことだ。
ファイナルサード侵入後はさらにセドリックが高い位置を取る頻度が増え、これまではライン間で受け手になることもあったウーデゴールは前線を俯瞰で見れる位置から存分に攻撃のタクトを振るった。
また、この配置だとサカがよりゴールに近い位置で仕掛けられる上にSBを使うという選択肢も生まれるため、脅威度が増したように感じる。
また、ウーデゴールがこの位置にいることで、右サイドが詰まった時に左サイドへの振り直しやすさが増したこと、パスだけでなくドリブルでウーデゴールが左まで運べるという点で、ピッチをより広く使えるようになったと感じる。
左サイドでもスミスロウの仕掛けに合わせてティアニーが外を絶妙なタイミングで上がるため、守備側はスミスロウの仕掛けだけに集中できなくなっていた。
先制ゴールはカウンターからだったが、スミスロウはティアニーのオーバーラップに相手DFが釣られたことで生まれたスペースにカットインのコースが空き、そこから見事にゴールを決めて見せた。
ファイナルサードでもその手前でも2-3-5の形の中で様々な形が見られるようになったのは起用される選手のキャラクターだけではなく、チームの戦術理解度が向上した影響もありそうだ。
また、押し込んだ後の崩しも機能したが、ボールロスト後の切り替えの強度、そして両CBのカウンターの芽を摘む守備も光っていた。
ガブリエウやホワイト、トーマスが敵陣で回収し、再びアーセナルのポゼッションに繋げたことで、試合を通してアーセナルは主導権を手放すことなく試合を進められた。
特に、前半は79%のボール支配率を記録できたのも、ネガトラや被カウンター時の3人の貢献のおかげだろう。
5バックのずらし方
また、チームの成熟度の上昇が見られるのは2-3-5の引き出しだけではない。
以前はただ5バックに突っ込んでは跳ね返されてを繰り返して無為に時間を過ごすことも多かった。
しかし、この試合では5バックを崩すための工夫が見られた。
多かったのはWGが仕掛けてその外をSBがオーバーラップをしたり、WGのドリブルで相手WBを押し下げて、最終ラインを下がらせてから5バックの弱点であるマイナス方向へのクロスを入れるパターンだ。
そして、マイナス方向に戻してから逆サイドに振って相手の視野をリセット、さらにそこから手早くクロスを入れるやり方も見せていた。
これはオフサイドで取り消されたラカゼットの幻の先制ゴールのシーンが最も分かりやすい。
この2つは5バックの選手に視野をリセットさせることで優位に立とうとする策だ。
次に、後半になると増えたパターンで、大外の選手がWBを引き付けて、その背後をフリーランで抜け出してからのニアゾーンからのマイナスの折り返しを狙う形だ。
こちらはまず、5バックの一角を置き去りにしてからチャンスを作ろうとする策だった。
どの形からも惜しくも得点は生まれなかったが、惜しいシュートや相手の身体を張ったブロックに阻まれたシーン、PKを貰えそうなシーンがあったため、今後も継続すれば得点にもつながるだろう。
セドリック・ソアレスという右SB
冨安の代役に抜擢されたセドリック・ソアレス。
持ち味はオーバーラップ、インナーラップのタイミングの良さとクロスの精度だ。
そして、その持ち味を生かしてこの2試合ではサカとの好連携も披露している。
冨安が起用された際にはサカが大外から仕掛けて相手を引き付けてから、フィルター役になれる位置の冨安に戻してアーリークロスを入れる形が武器になっていた。
この形はもちろん武器になるし、セドリックもできる。
しかし、セドリックの場合、WGの外を回るオーバーラップで囮になるか、パスを引き出して速いクロスを入れるシーンが多く、直近2試合ではこの形はしっかり機能していた。
この形のメリットは相手に視野を変えさせるクロスを言えられることもそうだが、それはバックパスからファーへのアーリークロスも同様だ。
しかし、WGと対面している選手がケアすることが増えてWGのカットインの成功率が上がるのはこの形の特権と言って良いだろう。
一方、セドリックは前からのプレスの際に大外の選手へのスライドが遅れるシーンがあり、それはこの2試合でもいくつかあった。
また、対人守備ではどうしても冨安に後れを取り、前からのプレスの際SBで奪いきる形が多いアーセナルでこれは少々苦しい弱点だ。
下位相手ならば、この弱点が露呈することも少ないが、上位2チームやCL出場権を争うチームとの対戦する際には冨安を起用したいが、それでもバックアッパーとしては十分な戦力となれるだろう。
おわりに
この試合では久しぶりにペペが起用された。
その影響で試合終盤、サカが左に回ったのが少し残念だが、AFCONを経て練習態度もまじめになったらしいペペはこの試合、決して長くはない出場時間の中で存在感を発揮した。
とはいえ、やはりこの試合のぺぺのプレーを見ても、左WGでのプレーを見たいというのが率直な感想だ。
スミスロウとの連携もよく、ティアニーが偽SBで後ろに残るということは、昨シーズン復調のきっかけにもなったティアニーの代わりに左で幅を取る役割ができるということもあり、ペペがアーセナルで生き残るためには左WGではないかと思う。(CF起用も見てみたいけど)
次の試合は再びウルヴスとの1戦だ。
前回対戦でも苦戦を強いられた相手だけに、要注意が必要だ。
5バックの攻略において、セドリックは1つの打開策になることを示したが、その一方でセドリックをあのウルヴスのWGと対峙させるのはやはり怖い所ではある。
また、アルテタはティアニーとタヴァレス、スミスロウとマルティネッリでもそうだったが、負傷離脱中に結果を出した選手には怪我した選手が戻ってきてもしばらくチャンスを与える傾向にある。
その点からもアルテタは冨安とセドリックどちらを選ぶのか要注目だ。
スパスィーバ
エジルに見惚れてグーナーになった人。18/19シーズンから戦術ブログを開設してリーグ戦全試合のマッチレビューを投稿している戦術系グーナーです。