【マッチレビュー】アーセナル対ウルヴス「ついに報われた」
アーセナル2-1ウルヴス
もくじ
試合のハイライト
両チームのスタメン
ラカゼットのゴールじゃなくてサーのオウンゴールだろって?それは公式が勝手に言ってるだけだから()
前節、2-1で勝利したブレントフォード戦からのスタメン変更は1人。
起用に応えて活躍した選手は継続起用する傾向のあるアルテタが前節では先制ゴールを決めるなどしたスミスロウではなく、すぐにマルティネッリにスタメンを戻したということで何事かと思えば、どうやらスミスロウは病気(コロナではない)による欠場とのことだ。
さらに、前節ではベンチ入りしていた冨安はふくらはぎのけがを再発したとのことでベンチ外になっている。
2-1で勝利を収めた前節レスター戦から1人のスタメン変更だ。
ファン・ヒチャンは12月のブライトン戦で負傷交代して以来のスタメン復帰となっている。
一方、前回の対戦でアーセナルを苦しめたトリンコンはベンチスタートのようだ。
CBを基準にしない前プレスを行う3トップ
ウルヴスはアーセナルに敗れた後の2試合は3-5-2に変更して2連勝を飾った。
しかし、アーセナル戦では再び3-4-3に戻してきた。
敗れはしたが、アーセナルを苦しめた3-4-3に戻すのは理にかなっていると言えばその通りだ。
ウルヴスの前からのプレスの特徴はCBをどう捕まえるか、どこに誘導するか、よりもCBの前でライン間との中継役やCBより高い位置で起点になることが多いアンカー+両SBの2-3-5の3の部分をどう捕まえるかに重きを置いているように見えた。
ヒメネスはCBを内から外に追い出すようにプレッシャーをかけていたが、それはあくまでも結果そうなっただけであって目的はトーマスへのパスコースを消すことにあった。
CBを基準に考えた前プレスだとその前にいる選手のポジションの取り直しでプレスを回避できるが、その逆の場合、CBはボールを持てるしある程度は運べるけどパスの出し先がないという現象が起きる。
そうなれば、FWの前プレスを置き去りにはできないし、後ろの選手は必要以上に前に釣り出されることもないからマークも整理されて守りやすくなる。
さて、ここまでの話だと「アーセナル詰みじゃん」と感じるかもしれない。
前線の動きについては後述するとして、この試合、両SBは極端にタッチ数を減らしたわけではなかった。
シャドーの選手がCBにプレッシャーをかける場面や、SBがCBと同じ高さまで下りていく際にはシャドーの選手はSBを少し放していたこともあり、SBを起点に崩せるシーンは作れたが、いつもの試合より外側で起点になっていたように感じた。
裏への意識
前回対戦時のままだったら、CBが運べたとしても、前線が誰も裏を狙わず、狭いままのライン間に突撃していたかもしれない。
しかし、この試合ではサカとマルティネッリの両WGの裏へのランニングの意識が高く、そこにラカゼットも加わり最終ラインと駆け引きをすることで、ライン間が空きライン間で待つジャカとウーデゴールへのパスコースも作れた。
そして、ライン間からのレイオフを受けることでトーマスも前を向けることで、そこからの展開も活かせる形になり、アーセナルはこの試合の主導権を握り、攻めることができた。
タスクとアドリブ
最近のジャカはわかりやすくボランチというよりIHとしてライン間でのプレーが増えている。
ラカゼットもここ2試合ほど、裏への意識が強くなり、前線に留まるようになった。
これはビルドアップの安定により、ラカゼットが降りる必要がなくなり、ゴールに直結する動きに専念できるようになったからだ。
この試合では、2人共最初はそれぞれ与えられていたタスクを全うしていた。
しかし、後半に入り、前半からそうだったが、中央からのビルドアップが普段よりも機能しないということで、ラカゼットは後半は降りてきてパスを引き出す動きでビルドアップを助けようとする。
これはおそらくラカゼットのアドリブだろう。
その一方、ジャカは極力ライン間に留まり、与えられたタスクを全うしようとしていた。
この試合、ラカゼットが低い位置に降りても機能不全に陥らなかったのは両WGの裏への意識の高さもあるが、ラカゼットが空けたスペースウにジャカが飛び出していこうとしたり、ライン間での役割で工夫を見せたことも影響しているように感じる。
そもそも、ジャカが降りてラカゼットが前線に残れればそれがベストだが、その場合、SBの立ち位置も調整する必要があり、選手のアドリブで行うにはいささか大規模な変更になるだろう。
そう考えるとアドリブでビルドアップのサポートを選んだラカゼット、与えられたタスクに専念しつつ、その先を目指すジャカ、どちらの判断もベターなものだったと感じる。
先制点は冨安がいたら防げたのか?
この試合のアーセナルの前からの守備は、3バックに3トップをぶつけてWBにはSBがスライドする形だ。
そして、シャドーの選手に対しては左のファン・ヒチャンに対してはシンプルにホワイトがスライドして対応するシーンが多かった一方、ポデンスが浮くシーンが多かったように感じる。
これは普段であれば、4バックがそのままスライドするのだが、この試合では左CBのガブリエウがウルヴスのCFのラウール・ヒメネスにマンマークで対応していたことで、ポデンスを誰が見るか曖昧になったためだろう。
右からのビルドアップの際はティアニーがスライドして監視できるが、左からのビルドアップの際はティアニーにはWBにプレッシャーをかけるタスクがある。
ウルヴスはダブルボランチで、ウーデゴールとトーマスが対応していたため、ジャカが対応するべきだったのかもしれないが、仮にポデンスのマークでがっつり下がってしまえば、トーマスではカバーしきれないスペースが生まれてしまうため、それはできない。
そのため、ジャカの背後でポデンスがボールを受けるシーンが多く、ポデンスがこの試合の流れの中からのウルヴスの攻撃の起点になっていた印象だ。
さて、話が逸れてしまったが、1失点目について語る上でアーセナルの前からの守備のやり方は欠かせないのでここで説明させてもらった。
ウルヴスの先制ゴールは自陣からのFKをガブリエウが回収し、ラムズデールに戻そうとしたところをファン・ヒチャンがパスカットし、ラムズデールをかわして無人のゴールに沈めて生まれた。
このシーン、ガブリエウが左CBながらにあそこまで釣り出されたこと自体は、この試合で課せられたヒメネスを抑えるというタスクから考えて、自然なことで、FKからの競り合いでこぼれたボールを回収しようと向かった結果なので問題ないと言える。
なので、このシーンではガブリエウはホワイトのカバーであそこまで出たわけではないので誤解のなきよう、そして、冨安がどうこうというのはこのシーン、一切、関係ないので。
その証拠に流れからのプレーでもガブリエウは低い位置やサイドでもヒメネスをしっかりマークしていた。
パスを出した瞬間、おそらくガブリエウは位置的にファン・ヒチャンを視認できていなかったのだろう。
ガブリエウのパスがずれたのはもちろんそうだが、ホワイトもガブリエウも上手く出し抜いたファン・ヒチャンを褒めるしかないだろう。
結論、多分冨安がいても防げなかった。
やけくそに見えた合理性
後半に入って、マルティネッリに代えてペペ、セドリックに代えてエンケティアを投入したことで3-4-1-2に変更、ファイヤーフォーメーションか~って思ったが、この交代がきれいにはまったのが同点ゴールだった。
同点ゴールのシーンを含めて斜めに動いて裏を狙い、CBを釣る動きを精力的に行い、同点ゴールのシーンではそこでパスを引き出してからエンケティアが作ったスペースに外から入ってきたペペがマイナスからの折り返しを受けて反転からのシュートを決めた。
似たようなシュートシーンがこの試合では序盤からあった(特にラカゼット)が、どのシーンでもシュートブロックが1枚か2枚は入ってきていたが、このシーンではコーディーはエンケティアに釣り出され、キルマンはラカゼットをマークしていた分シュートブロックに行けず、ペペがシュートをスムーズに打てたのだろう。
おわりに
試合は後半AT、ウーデゴールのパスからラカゼットのフリックをペペがリターン、角度のない所をラカゼットが決めきり、劇的な逆転ゴールを決め、勝利を収めた。
ここ数試合、攻守に奔走し、決定機にも顔を出しながら、決定機を決めきれずにゴールから見放されていたラカゼットだが、値千金の決勝ゴールを決め、喜びを爆発させた。
ラカゼットに久しぶりのゴール、控え組の活躍で見事な勝利を収めたアーセナルは2試合未消化ながら4位のユナイテッドと勝ち点1差、3位のチェルシー(1試合未消化)と勝ち点5差とCL出場権復帰が現実味を帯びてきた。
27日に開催予定だった27節リヴァプール戦は延期になったため、次の試合は3月6日の28節ワトフォード戦ということで、確実に勝ち点3を積み上げて欲しい所だ。
スパスィーバ
エジルに見惚れてグーナーになった人。18/19シーズンから戦術ブログを開設してリーグ戦全試合のマッチレビューを投稿している戦術系グーナーです。