【マッチレビュー】レスター対アーセナル~苦しい試合を勝ち切る力~
第10節スタート前でアーセナルとレスター、さらにはユナイテッドとエヴァートンが勝ち点14で並び、その上にはブライトンとスパーズも勝ち点15で並び、4位のウェストハムも勝ち点17で気が付けばTop4と目と鼻の先になっています。
この混戦を抜け出しCLの舞台に返り咲くためにも勝ち点3が是が非でも欲しい試合となっています。
もくじ
試合ハイライト
レスター0-2アーセナル
両チームのスタメン
前節のブレントフォード戦からは1人のスタメン変更となっています。
右WBのリカルド・ペレイラに代わりルーク・トーマスが先発しカスターニュが右、ルーク・トーマスが左WBに入っています。
ミッドウィークに行われたカラバオ杯ブライトン戦からは9人のスタメン変更になっており、この試合含めた3戦すべてにスタメン出場しているのはソユンクのみです。
それにしても、オルブライトン、フォファナ、ジャスティンがいない中でロジャース監督はよくやってますよね。
前節のヴィラ戦からのスタメン変更はなし、ミッドウィークに行われたカラバオ杯リーズ戦からのスタメン変更は8人となっています。
この試合含めた3試合すべてスタメン出場しているのはホワイトとスミスロウだけとなっています。
また、ホワイトは体調不良による欠場が心配されましたが、問題なくスタメン出場しています。
一方、ティアニーとウーデゴールはそれぞれ負傷を抱えており上手くいけばレスター戦には間に合うだろうと言われていましたが、ティアニーはベンチ外、ウーデゴールはベンチスタートとなっています。
WGが前に出ない守備
レスターは3-4-1-2からビルドアップ時はティ―レマンスが高い位置に上がり、後方は3バック+スマレでひし形を形成する3-1-5-1になります。
対するアーセナルは3バックに3トップをぶつける形ではなく、オーバメヤンとラカゼットの2トップが3バックの中央からサイドに出すのに合わせてスマレへのコースをケアしながら同サイドに2トップが追い詰めていくプレスで、WGはWBを監視してあまり前に出ない形になっていました。
WGがCBに圧力をかける形は前から奪う上では有効ですが、同時にSBが前にスライドする必要があり、その背後を使われることを嫌ったのでしょう。
GKからのビルドアップに対してなど、限定的に前からのプレッシャーを強める時のみ、WGも前に出る形で、それ以外は4-4-2の守備になっていました。
同サイド圧縮がはまれば前から捕まえられたのですが、ラカゼットが内から外に追う関係上、シンプルにCBに持ち上がりを許すシーンやハーフスペースに顔を出すマディソンとティ―レマンスへの縦パスが通され、レスターに攻撃を許すシーンが2点取った後に多かったのが少し気になる点ですね。
ラカゼットがいるとトーマスも輝く
9分過ぎに、冨安が低い位置に流れてマディソンをサイドにずらして生まれたパスコースにラカゼットが顔を出し、ホワイトからの縦パスを引き出すと、レイオフでトーマスに落としてトーマスからタヴァレスに展開したシーンがありました。
この試合では、このようにラカゼットが縦パスを引き出してトーマスに落とすことで、トーマスが前を向いて受けられるシーンが多くあり、そこからの長い展開やショートパスでラカゼットやロコンガとの連携から抜け出す形も有効でした。
また、この試合ではサカとラカゼットの関係の良さも光っていました。
サカが相手のDFラインを押し下げて、その手前のスペースでラカゼットが受ける形やサカが内側に入る際にはラカゼットが入れ替わるように外に流れる動きもスムーズでした。
18分にはカウンターでトーマスからの大きな展開をサカが受けて仕掛ける際にラカゼットはマイナスの位置で受けられウ葉に待機し、シンプルにサカがラカゼットに預けた所からの仕掛けのこぼれ球をスミスロウがおしゃれなワンタッチで流し込み、2点目を決めました。
ラムズデールの貢献
今日はリードした後、押し込まれる時間が続き、クリスタル・パレス戦ほどではありませんでしたが、インテンシティの低下もありましたが、その中でもCBがアタッカーに仕事をさせなかったのももちろんですが、ラムズデールの好セーブが光りました。
前半終了間際のマディソンのFKとそのこぼれ球に対する対処はどちらも完ぺきで、その後も、1対1での飛び出しもさえわたっていました。
さらに、ラムズデールの出た試合全てにおいてそうなのですが、ビルドアップ時の貢献がかなり大きいですよね。
GKからのビルドアップの際には両CBがGKの脇に開き、その前にアンカー(orダブルボランチ)が下りてきて縦のコースも作るひし形or五角形を形成する形が主流です。
それに対する前プレスの形は2トップ+トップ下で2トップがGKと両CBを監視しトップ下がアンカーの選手を見る形か、3トップが直接3人にプレッシャーをかける形が主流になります。
この時、GKの技術が高いと、2トップとGK含めた3バックで数的不利になり、守備側は圧力を強くしにくくなります。
その典型的な例が今年のプレミアリーグ第3節アーセナル対シティのシティのビルドアップ時の配置でした。
レスターは2トップ+トップ下のマディソンの前プレスを採用してきました。
対するアーセナルはGK含めた3バックの前、レスターの2トップの斜め後ろに立ちGKからのパスコースを作る動きをします。
トーマスの監視のためにマディソンも釣られてくるため、その背後にスペースが生まれ、ラムズデールはこのスペースに試合中何度もグラウンダーですばらしいパスを通していました。
特に、1分50秒辺りのシーンではラムズデールからラカゼットにパスが通り、ラカゼットが後ろからソユンㇰにつかれながらレイオフで落とすと、後ろでの動き直しの後ボールに合わせて位置取りを押し上げていたトーマスがそれを受けてタヴァレスに繋ごうとするサイドチェンジ。
サイドチェンジは惜しくもカットされてしまいましたが、GKからのビルドアップでレスターのプレスをはがした後、大きなサイドチェンジでさらに局面を変える狙いはとても良かったと思います。
ヌーノ・タヴァレスのポジションの妙
高い位置では大外で幅取り役ですが、低い位置では少し違います。
完全にタッチライン際で待機するのではなく、少し内に絞った位置で受けていたのが特徴的でした。
少し内に絞ることで、外に流れるスミスロウへのパスコースと内側に仕掛ける2つの選択肢が生まれ、対面のDFは対処が難しくなるため、飛び込みにくくなり、その結果が試合中何度かあった外へのパスをちらつかせてタヴァレスが内に切り込むドリブルでチャンスを演出したシーンになっています。
はまりに行ったレスターの交代
レスターはHT明けにアマーティとイヘアナチョを下げてハーヴィ・バーンズとルックマンを投入し3バックから4バックに変更、2点差ということで攻撃的に出たと考えられます。
しかし、前半は3バックと2トップでズレを作れていたところを2CBと2トップではまりに行っていたように見えました。
結果、後半はティ―レマンスのところでズレを作るのが精いっぱいになった印象で、その中でもアーセナルはリードをしていることもあり、後半は途中までは4-4-2であまり前から奪いに行く雰囲気は出さなかったこともあり、後半もレスターペースで進みましたが、ボールの前進に苦労していた印象です。
ビルドアップでは苦戦するようになりましたが、その一方、崩しの局面ではルックマンとバーンズの投入、とりわけバーンズの投入が機能していました。
前半はルーク・トーマスが左の幅取り役でしたが冨安にとって脅威とはなりませんでした。
しかし、後半のバーンズはよりWG的に幅を取った所からの仕掛けで冨安をサイドにピン留めし、その背後にルーク・トーマスや中盤から上がってきたスマレが走り込む形からレスターはチャンスを作ります。
サカがルーク・トーマスを見ますが、この時にどこでトーマスにマークを引き継ぐのか、もしくはそのままついて行くのか。
それから、3人目が走り込んできたときの対応はどうするのか。
この辺りが整備されず、エリア内まで侵入を許してしまい、ラムズデールに助けられたシーンが増えました。
おわりに
昨シーズンはCKに期待感が無かったところから一転して今季は、特に最近は期待できるCKが増えています。
ニアに走り込んで逸らす形(トーマスのヴィラ戦のゴールやそこからのこぼれ球を押し込んだリーズ戦のチェンバースのゴール、この試合のガブリエウのゴール)と、ニアに走り込むことで相手の意識を集めて手薄になるファーに放り込んで狙う形(シュマイケル湖好セーブに阻まれた後半オーバメヤン)の使い分けの練度が上がれば、今後もセットプレーが得点源になる可能性も高いです。
レスターとの直接対決を制したことで勝ち点を17まで伸ばしました。
ブライトンがリヴァプールと劇的な引き分けを演じ、スパーズがユナイテッドに完敗を喫したことでこの2チームを上回りアーセナルは6位に浮上。
この位置にいるのは久しぶりに感じますね。
その上を見ると、ウェストハムはこの記事を執筆時点で10節未消化ながら勝ち点17、シティはラポルトが退場になったこともありクリスタル・パレスに敗戦(同じことしたエヴァンスは退場してないけど)で勝ち点20のままと次節の結果次第でここもひっくり返る可能性があります。
シティは次節はマンチェスターダービー、ウェストハムは今節がヴィラ、次節がリヴァプール戦と勝ち点を取りこぼす可能性が十分にアルカードの一方、アーセナルはワトフォードです。
ここを確実に勝ってその次、代表ウィーク明けのリヴァプールにプレッシャーをかけたいところですね。
GK含めたセットされた状態でのビルドアップもアーセナルの武器ですが、それ以上に後方にはホワイト、トーマスがいて、前線にはオーバメヤンにタメを作れるラカゼット、そして切れ味のあるドリブルのあるサカとスミスロウのいるカウンターこそ相手にとって最も脅威になる武器のように思えます。
スパスィーバ
エジルに見惚れてグーナーになった人。18/19シーズンから戦術ブログを開設してリーグ戦全試合のマッチレビューを投稿している戦術系グーナーです。