【マッチレビュー】アーセナル対リーズ~帰ってきたヴェンゲルボール~
直近2試合は内容は良かったものの2連敗中で久しぶりに中1週間で迎えるプレミアリーグ第24節リーズ・ユナイテッド戦。
次節は大一番のシティ戦なのでその前に勢いに乗りたいところです。
アーセナル4-2リーズ・ユナイテッド
もくじ
両チームのスタメン
アーセナルは前節のヴィラ戦からは5人のスタメン変更をしてきました。
出場停止明けのレノちょダビド・ルイスがスタメン復帰、前節負傷交代のトーマスに代わりセバージョスがジャカの相方を務めます。
そして、ここ数試合ハイパフォーマンスを披露し続けてきたラカゼットとペペは予想外のベンチスタートでウーデゴールはトップ下で初先発、オーバメヤン1トップでのスタメン出場です。
対するリーズは前節のパレス戦からは1人変更してきました。
パレス戦で負傷交代のカルヴィン・フィリップスに代わり右SBのシャクルトンが今季2試合目のスタメン。
フィリップス欠場でアンカーはパレス戦では右CBのストライクが、右CBは右SBで出場していたエイリングが務めます。
両チームの二次配置
アーセナルのボール保持時
今日のアーセナルのボール保持時の動きは一言で言うと「ヴェンゲルボールが帰ってきた!」です。
人とボールが常に流動的に動くアグレッシブなポゼッションはかつてのエジルやカソルラ、ラムジーがいたころのアーセナルの見る者を魅了する芸術のようなフットボールそのものでした。
リーズの守備のベースはビエルサの代名詞ともいえるオールコートマンツーマンディフェンスで、CBは2人でオーバメヤンを監視、1トップのバンフォードがアーセナルのCB間を遮断以外のエリアはマンマークが徹底されていました。
そして、そのマンマークに対して流動的なポジションチェンジはマーカーを引っ張っていくため、リーズの守備陣形に歪みやスペースが生まれて、守備の崩壊につながりました。
・ウーデゴールによるセバージョスへのスペースメイク
特にこの動きが光ったのは左サイドからSBを引き連れて中に入り楔のパスを受けるスミスロウが中に絞ってできるSB裏のスペースを使うオーバメヤン。
中央から移動してアンカーを引っ張り楔のパスを引き出すウーデゴールとウーデゴールが空けたライン間のスペースに侵入するセバージョス。
この2組のポジションチェンジはこの試合で特に光っていました。
特に、オーバメヤンをリーズはCB2人で監視していたところを左サイドに流れることでエイリングとの1対1に持ち込むことに成功。
また、楔のパスを入れる上で両CBのドリブルでの運びも功を奏していました。
リーズのボール保持時
リーズのビルドアップはGKのメリエを交えたビルドアップを多用していました。
そして、崩しと前進では3人目の動きとレイオフを多用して少ないタッチ数で手早く前進を目指すのが特徴です。
対するアーセナルは、守備時に右肩上がりの3-2-3-2のような形で前からのプレスをかけていました。
左SHのスミスロウはSBをマークする一方、右SHのサカが前プレス時にはオーバメヤンと並んでCBを監視するような立ち位置で必要に応じてオーバメヤンかサカがGKまでプレッシャーをかけに行きました。
2点目のPK獲得はこの前プレスの形で奪取に成功したものです。
サカはGKやCBからSBへのコースも抑えられる立ち位置だったので、グラウンダーのパスは通させません。
メリエが浮き球でSBのアリオスキを狙う時にはボールが移動する間にベジェリンが前にスライドし、アリオスキからジャック・ハリソンへのパスコースを抑えつつプレッシャーをかけ、さらにその背後はダビド・ルイスやセバージョスがカバーしに行く形でした。
また、アーセナルの前プレスが強かったこともあり、メリエのキックがアバウトになりベジェリンが直接回収できるシーンもありました。
マンマークの落とし穴
先制点のシーン
先制点のシーンはビエルサリーズの守り方の欠点が露呈したシーンでした。
低い位置のマガリャンイスがドリブルで持ち上がるのに対してバンフォードは逆サイドに展開させないような寄せ方をしていました。
そして、ハーフウェイラインを超えたあたりでジャカのマークをしていたダラスがジャカを離してマガリャンイスにプレスをかけた所でマガリャンイスの楔のパスがスミスロウに通り、スミスロウがワンタッチでフリーのジャカに落とし、ジャカのパスが左サイドに流れたオーバメヤンに渡りました。
マガリャンイスが敵陣まで持ち上がったことでダラスが釣りだされ、ジャカがフリーになり、最終的にはアシストを記録。
CBが持ち上がってきたときに誰が対処するのか、マークはどう引き継ぐのかの曖昧さがこの失点の原因でしょう。
スミスロウは一度大外の深い位置に移動してからマーカーのSBを引き連れてハーフスペースに降りてきてマガリャンイスからの楔を受けてワンタッチでジャカにつなぎ、ジャカのパスをスミスロウが空けたスペースに流れたオーバメヤンが受けてドリブルでエリア内に侵入。
エイリングを跨ぎフェイントで揺さぶってからニッをぶち抜くゴールを決めました。
スミスロウの一度大外に流れる動きも見事でした。
おそらくあれでシャクルトンを振り切れれば自分で前を向いてラストパスを送る狙いだったのでしょう。
しかし、シャクルトンがついてきたのでシンプルに落とす方向に切り替えました。
しかし、シャクルトンがスミスロウについていき前に出たことでその背後にスペースが生まれ、オーバメヤンがそこに流れてきました。
1トップに対して2CBで守ることでリーズは数的優位を確保していましたがSB裏のスペースに流れてきたことでその優位性が崩壊、オーバメヤンの得意のゾーンなこともあり、逆に質的優位をアーセナルが握り、最後は質の差を見せつけてゴールを決めることに成功。
ダビド・ルイスの持ち上がりからのチャンスメイク
27分のダビド・ルイスの持ち上がりや52分のダビド・ルイスの持ち上がりのシーンもリーズがマンマークだからこそ起きた現象だと言えます。
特に、27分のシーンではバンフォードが懸命に戻っていますが、エリア手前までそれ以外の選手は一切ダビド・ルイスに圧力をかけられていません。
素早いリスタートの後だったというのもありますが、それでもCBがエリア手前までドリブルで持ち上がり最終的に深い位置からのマイナスの折り返しを入れる光景はなかなかに珍しかったですね(笑)
左SHのジャック・ハリソンはベジェリンについていき最終ラインに吸収され、アンカーのストライクはウーデゴールを抑えていてダビド・ルイスのケアに出ていける状況じゃありませんでした。
52分のルイスの持ち上がりも同様に、ベジェリンとサカが裏を狙うことでリーズのSBとSHは最終ラインに押し込まれ、ダビド・ルイスにプレッシャーをかけられる選手がいなくなっていました。
オールコートマンツーマンでついていっても、どこかでマークを離さざるを得ない状況になってマークを離しても難しい対応になるのがマンツーマンディフェンス衰退の一因なのかもしれません。
まとめ
オーバメヤンは少し前ならトラップミスしていたりシュートが精度を欠いたような状況下でしっかり決めきることができたことからもコンディションは間違いなく上向いています。
マガリャンイスもビルドアップや持ち上がり、守備対応を見ているとようやくプレミア最高CBのマガリャンイスが帰ってきたなというところです。
そして、スミスロウは1アシストに加えて先制点の起点になり、交代するまで終始リーズの守備を持ち前のポジショニングでひっかきまわしていました。
躍動感あふれるアーセナルらしいサッカーを見ることができたのは何よりですが、それでいて守備の規律とメカニズムが浸透しているのはアルテタらしさも同時に見えていた証拠で、ここ数年間、守備に穴をあけてでも攻撃するか、攻撃の威力を落としてでも守備の穴をふさぐかという問題に対して、ついに強度の高い守備と魅力的な攻撃の両立の兆しがこの試合では見られたと思います。
2月はこの後ELラウンド32ベンフィカ戦1stレグ、プレミア25節シティ戦、ELラウンド32ベンフィカ戦2ndレグ、プレミア26節レスター戦と難敵続きですが、期待していけると思います。
スパスィーバ、ここまで読んでいただきありがとうございました。
エジルに見惚れてグーナーになった人。18/19シーズンから戦術ブログを開設してリーグ戦全試合のマッチレビューを投稿している戦術系グーナーです。