【マッチレビュー】マンチェスター・ユナイテッドvsアーセナル「チームとしての落ち度」
もくじ
両チームのスタメン
アーセナルは前節先制し1度は同点を許すも即座に勝ち越しに成功し勝利を収めたアストン・ヴィラ戦から1人のスタメン変更。
前節負傷交代や痛めた素振りのあったウーデゴール、ラムズデールは引き続きスタメン出場、そこに負傷離脱から帰ってきたジンチェンコがティアニーに代わってスタメン出場を果たしている。
対人守備で上回るティアニーではなくビルドアップへの貢献が大きい代わりに守備強度に不安のあるジンチェンコを復帰明けいきなりこのビッグマッチに起用してきたのは予想外だ。
対するマン・ユナイテッドは開幕2連敗のあと3連勝を飾り、1-0で勝利したレスター戦からスタメンを1人変更してきた。
右WGのエランガに代わり移籍市場終盤に9500万€でアヤックスから獲得したアントニーをいきなりスタメンデビューさせている。
マン・ユナイテッドの攻勢
1節、2節はブライトンとブレントフォード相手に理想と共に撃沈したマン・ユナイテッドは3節リヴァプール戦から方針を転換し3節リヴァプール戦ではカウンターに徹し、その後の試合も同様に現実的なサッカーをするようになり3連勝を果たしている。
しかし、理想を全く放棄したわけではなく理想を追求する時間と現実的に耐える時間を割り切った印象だ。
この試合はマン・ユナイテッドのキックオフで開始したが、キックオフ直後にアーセナル陣内に蹴り込むとその直後のスローインでもゴールに向けてロングスローでアーセナルの守備を押し下げて受けに回らせてからボールを握ることでアーセナルの前プレスを発動させずに撤退守備の陣形にさせてから丁寧なポゼッションを開始した。
スコアこそ動いていないがアーセナルの出鼻をくじくのには十分なインパクトを与えることに成功したマン・ユナイテッドは右SBのダロトが積極的に前線に絡みに行く一方で左SBのマラシアは後方でビルドアップに専念、右肩上がりの3バックの前にはマクトミネイとエリクセンが並び、特にエリクセンがビルドアップに大きな貢献をする3-2-5の配置で試合を進める。
対するアーセナルは出鼻をくじかれ、撤退守備の4-4-2を組み、ダロトにはマルティネッリがマークにつき右サイドも必要に応じてサカが下がり6バックのような配置になりつつもユナイテッドのバックパスに合わせてプレスをかけて陣形を押し返すことで4-4-2に戻した。
アーセナルはウーデゴールがエリクセンを抑えつつCBにプレスに行く時は後ろからロコンガがスライドする形を採用、逆サイドもマクトミネイに対してはジャカがスライドする形を取っていたが、ウーデゴールとロコンガのスライドが上手く行かず、エリクセンを捕まえきれないことが試合開始から気になっていた。
しかし、10分過ぎに1度フリーになりボールを持ったエリクセンに対してウーデゴールがプレスバックでボールを奪うとサカからのスルーパスに反応したマルティネッリが抜け出してデ・ヘアとの1対1を冷静に沈めて先制ゴールを決めた、はずだった。
ウーデゴールがエリクセンからボールを奪ったシーンをファールと判定されゴールは取り消し、幻の先制ゴールとなってしまった。
しかし、試合開始から15分経った辺りからは徐々に試合の流れがアーセナルに渡り始める。
機能したジンチェンコの立ち位置
主導権を握り返すとアーセナルのボール保持で目立ったのはジンチェンコがガブリエウよりも内側のレーンに絞る動きだ。
特に、ジャカがそれに合わせて外に流れる形が作れるほか、ジンチェンコが内側でパスを引き出せるメリットも開幕2試合よりも大きかったことで有効性が増した形になっていた。
マン・ユナイテッドの前からの守備は3トップでなおかつWGが外切り傾向で中央は縦関係気味だったことでブルーノの両脇にロコンガとジンチェンコが立つことで、ジンチェンコに釣られてマン・ユナイテッドの陣形がずれれば左サイドのアーセナルの選手も位置を変え、マルティネッリが直接CBからライン間へのパスを引き出したりもしていた。
Wボランチはそれぞれ人について行く傾向が強くライン間も空きやすくなっていたことでいつも以上にジェズスは組み立てに関与、さらにはアバウトなボールでもリサンドロ・マルティネスとの競り合いで優位に立ち、アーセナルの陣地回復において一役買っていた。
ハイライト解説
34分、ウーデゴールがエリクセンへのコースを抑えながらリサンドロ・マルティネスにプレスをかけるタイミングでエリクセンも下りていきSB経由のパスコースを確保すると同時にマークしていたロコンガから離れてパスを受けてブルーノ・フェルナンデスまで展開。
ブルーノのドリブルにガブリエウがタックルで止めにかかり、こぼれ球をサンチョが回収してラッシュフォード経由でアントニーが最後はデビューゴールを決めきり先制。
サリバがラッシュフォードについて行き逆サイドまで流れたことでガブリエウのタックルで止めに行く判断も間違ってはいないが、結果として最後ラッシュフォードに対してジンチェンコも内に絞りアントニーが完全にフリーになっていた。
正直、ブルーノからこぼれたボールがサンチョに渡った時点で勝負ありなゴールだった。
ウーデゴールがプレスに行く際、本当ならロコンガも連動して1列上がりエリクセンをマークし続けていればそれが理想だったが、それができなかった、こういった周囲との連動したプレスの継続というのもロコンガの守備面でずっと残っている課題の1つだ。
アーセナルの同点ゴールは60分、ジャカが高い位置でヴァランの縦パスをカットしたところからスタートし、ウーデゴールのラストパスにジェズスが反応するもボールがこぼれ、それをサカが押し込みサカの今季初ゴールとなった。
しかし、その数分後、敵陣でのロコンガのパスミスからエリクセン、ブルーノを経由するロングカウンターからラッシュフォードのゴールで勝ち越しを許してしまう。
ロナウドのプレスを辛うじて逃れたロコンガがそのまま強引にジェズスに縦パスを通そうとしてパスがずれたことが原因だが、この時ロコンガが事前に周囲を把握してガブリエウに戻して仕切り直していれば避けられた失点だったように感じる。
首振りによる周囲の状況把握の足りなさは昨シーズンからのロコンガの課題で昨シーズンもそれが原因での失点もあった。
昨シーズンからずっと足りなかった守備の寄せの甘さがこの試合では改善されていたので、同じように周囲の状況把握についても次の出場では改善していることを願うばかりだ。
とはいえ、1失点目も2失点目もロコンガが失点の起点になっているとはいえロコンガ1人のせいにできるほど他の選手の対応も良くなかった。
1失点目はマルティネッリ、2失点目はウーデゴールがそれぞれ逆サイドからの絞りが緩くなった結果それぞれブルーノとエリクセンがフリーで前向きにボールを持ててしまっているため、今日の失点はチーム全員の失点と言える。
アルテタが試合後のインタビューで「ある場面では守備の規律を欠いた」と言っていたがおそらくこの辺りの寄せの緩さのことを指しているように感じる。
普段のマルティネッリ、ウーデゴールならこういうところはちゃんとやっていただろうし、連戦で疲労がたまっていることも考えられるので、この2人はELはしっかり休んで万全の状態でリーグ戦次節のエヴァートン戦を迎えて欲しい。
おわりに
この試合がプレミアリーグ初出場となったファビオ・ビエイラは短い出場時間だったが今後に期待を含まらせるのには十分なプレー内容だった。
投入直後の失点に絡んだと言えば絡んでいるが、あの場面エリクセンから離れたのはロナウド→エリクセンのパスカットのためで、実際にロナウドのパスをひっかけることに成功している。
しかし、カットしたボールが再びロナウドの足元に転がりブルーノを経由してフリーで裏を狙っていたエリクセンにパスが通り、最後はラッシュフォードが決めることになった。
このシーン、絶対に間に合わない距離出はあったが全力で戻るファビオ・ビエイラには敬意を表したい。
全力で戻ってもジョグで戻っても失点には影響しなかったが、見ているファンに与える印象は雲泥の差だ。
そして、その後もボールのない所では闘志を全面に押し出して走り、ボールを持てば試合終盤に1本惜しいスルーパスもあった。
線の細さも目立つ分プレミアではまだどれだけ貢献できるか未知数だが、将来的には楽しみな選手であり、ELでは今すぐにでも楽しみな選手だ。
次の試合のELグループステージのチューリッヒ戦だがこちらのマッチレビューはお休みで次のマッチレビューはリーグ戦第7節エヴァートン戦の予定です。
試合のハイライト
エジルに見惚れてグーナーになった人。18/19シーズンから戦術ブログを開設してリーグ戦全試合のマッチレビューを投稿している戦術系グーナーです。