【マッチレビュー】クリスタル・パレス対アーセナル「戦術以前の問題」
クリスタル・パレス3-0アーセナル
もくじ
試合のハイライト
両チームのスタメン
アーセナルは冨安の復帰が噂されるもまたもベンチ外、さらにティアニーが代表戦で膝を負傷し、手術も必要で一説には今季絶望との話も出ている。
一歩のクリスタル・パレスも右WGのオリーセが欠場となっている。
強烈なクリスタル・パレスのプレッシャー
クリスタル・パレスは試合開始から前からのプレッシャーをかなりの強度でかけてきた。
プレッシング自体はキャラガーが1列上がり2トップになりCFのマテタと共に、アンカーのトーマスをマークする役割とCBにプレスに行く役割を担い、CB→CBのパスに対しては図のようにマテタがアンカー番に代わりキャラガーがCBにプレスに行く(逆もまた然り)を実行するオーソドックスなものだった。
両WGもそれぞれSBを監視し、ダブルボランチがウーデゴールとジャカを捕まえるという、前から人を捕まえに行く強気な守備を実行。
GKまで戻した時にはキャラガーやマテタはスピードを緩めることなくプレスに来るため、ラムズデールもアバウトにクリアするしかないシーンが多かった。
対するアーセナルはラカゼットがダブルボランチの背後から降りてきてトーマスの横に顔を出し、CB陣からの縦パスを引き出すシーンは何度かあったが、ラカゼットからの落としをトーマスが受けて前を向けるようなシーンはビルドアップの段階ではなかったため、普段の試合と比較してラカゼットのポストプレーを有効活用できなかった印象だ。
どこかちぐはぐなビルドアップ
大まかな枠組みは普段通りのアーセナルだが、この日は左SBがティアニーではなくタヴァレスだった。
右は2月から継続してセドリックが起用しており、この役割も板についてきた。
右はセドリックが低い位置で張りすぎないことで、相手のWGを内側に絞らせることでCB→WGのパスコースを確保することができる。
この時、サカが上手いのは高い位置に行きすぎないことでCBからのパスコースを確保し、なおかつスムーズに前を向いてボールを受けられる位置にいる点だ。
また、ホワイト→サカのパスコースがつながらない場合にはウーデゴールが降りることでサカへのパスの経由地点になりつつ斜め向きにボールを持つことで中央への選択肢も確保している。
一方、左サイドではタヴァレスが低い位置で張っていることで相手のWGも外に開き、その分スミスロウはガブリエウからのパスコースを確保するため低い位置に下がる必要が出てくる。
半身でパスを待てるサカと違い、後ろ向きで戻りながらパスを引き出すスミスロウは選択肢がこの時点で制限されてしまうため、苦戦しているように見えた。
また、スミスロウの強みは常に動きながら、ライン間に顔を出してパスを引き出せることだが、この試合の前半ではスミスロウが中に入るタイミングでタヴァレスがまだ低い位置にいることでクリスタル・パレスの守備陣も内側に絞るため、スペースがつぶれてしまっていた。
その中でも、ジャカやラカゼットとのワンツーで突破を図り、攻撃の存在感を発揮していたが、幅を取る選手がいる状態ならば、もう少し有効に攻めることができただろう。
ティアニーならば、オーバーラップのタイミングを間違えないため、このような渋滞は発生せず、幅を使いつつ狭いスペースでのテクニックを発揮できるがタヴァレスはそうではなかった。
ならば、最初からスミスロウが左WGからハーフスペースでパスを受ける役割で幅を取る役割を左SBのタヴァレスに任せるのも現実的な選択肢ではないだろうか。
幸い、タヴァレスにはSBらしからぬ足元のテクニックと両足での高精度なクロスというティアニーにはない素晴らしい武器を持ち合わせているので、こちらも有効活用するためには良い選択肢だと思う。
スムーズな循環の重要性
このシーンではジャカが下がりタヴァレスに上がるように促した後スミスロウにも内側に入るように指示を出し、ガブリエウからタヴァレスの裏を狙うロングフィードを出した。
そのこぼれ球をジャカが回収し、斜めに裏を狙うラカゼットに通し、マイナス方向に落としてトーマスがシュートを狙ったシーンだった。
このプレーではゆったりした流れでジャカの指示での循環だったが、スムーズに回ることでその後のチャンスにつながったシーンだ。
いるべきことに人がいることでボールはスムーズに回り、動くべき方向に動くことで相手のDFラインを動かし、スペースが生まれたのだ。
後半の修正
HTにタヴァレスを下げてマルティネッリを投入、ビルドアップ時の配置を図のように変更した。
この修正でスミスロウはハーフスペースでプレーできるようになり、マルティネッリが幅を取った所から仕掛ける配置になった。
また、ジャカも時折怪しいが、タヴァレスと比較するとタッチラインから少し内側にポジションを取ることができるため、ガブリエウからマルティネッリへのパスコースを確保できたことも後半は前半よりもスムーズにビルドアップをできるようになった要因の1つだろう。
右はサカが仕掛けてセドリックがオーバーラップ、左はマルティネッリが斜めに仕掛けてスミスロウがクロスするようなランニングでマルティネッリにドリブルのコースを提供する形が目立っていた。
両サイドからゴールに迎える形が構築でき、あとは最後の精度という状況だったのだが、そこでさらに攻撃的な姿勢に出る。
66分にセドリックを下げエンケティアを投入し、ラカゼットと2トップを組む形の3-1-4-2に変更した。
エンケティアが最終ラインと駆け引きをし、スミスロウにはライン間への仕掛けに専念させたい狙いがあったのだろう。
また、エンケティアの裏への動き出しはそれまでクリスタル・パレスの最終ラインとの駆け引きが少なかったこの試合のアーセナルにおいては有効なものになった。
特に、中央からサイドへ流れる動きで左サイドのサカ、スミスロウとの連携や、投入直後の左に流れてからのクロスは決定機になっていた。
それだけに惜しまれるのはサカとマルティネッリのサイドを入れ替えてしまった点だ。
エンケティアがサイドに流れる分サカやスミスロウがゴールに向かうのならば、左サイドにスミスロウとマルティネッリを置き、左からのクロスに対して左足で合わせるためにサカを右に置いたままにするべきだったように感じる。
おわりに
失点シーンについてはセットプレー2つは何も言うことはないし、2点目もガブリエウはキャラガーとアイェウ両社への対応を迫られた結果CBのアンデルセンからのパスをカットしようと飛び込みかわされてしまった。
また、トーマスが負傷交代し代わりにピッチに立ったロコンガは見違えるように良くなっていた。
球際で体を張れていたこと、ボールを受けに降り過ぎないこと、パスを引き出すために動き直しを頻繁に行うことが短い出場時間の中とはいえしっかりできていた。
もちろん、当たり負けする線の細さはあるが、それはすぐどうにかできる問題ではない。
しかし、意識の問題は改善の傾向が見られたことは大きな収穫だ。
あとは、これを90分間通してできるかどうか、強度の高い試合でも徹底できるかが今後のロコンガの評価のカギを握る。
また、この試合では不本意な形で交代したタヴァレスには前述の通り、ティアニーとは異なるタヴァレスにあったタスクがあるはずだ。
この試合はタイトル通り、「戦術以前の問題」だった。
タヴァレスのポジショニングなど細かい点に目を向ければ気になるところはあるが、それ以外は間違っていないし、HTの修正も逆転に向けてよいものになるはずだった。
しかし、いくら配置を整えてもパスミスやトラップミスを連発していれば勝てるものも勝てない。
それに尽きる。
次節のブライトン戦のマッチレビューはたぶん書けるかな。
ま、試合とセットで楽しみにしててください。
エジルに見惚れてグーナーになった人。18/19シーズンから戦術ブログを開設してリーグ戦全試合のマッチレビューを投稿している戦術系グーナーです。