【マッチレビュー】アーセナル対サウサンプトン<紙一重の必然>
もくじ
試合のハイライト
アーセナル3-0サウサンプトン
両チームのスタメン
前節からのスタメン変更は無し、同じ11人で試合に挑む。
前節上手くいかなかった部分を人ではなく仕組みで修正してくれるかどうか・・・
あと、オーバメヤンは規律違反でベンチ外となっている。
1-1ドローとなった前節ブライトン戦から5人のスタメン変更をしてきた。
GKは正守護神のマッカーシーがブライトン戦でハムストリングを負傷、2nd GKのフォスターも負傷しており、GKがプレミアリーグ出場歴のない3rd GKのハリー・ルイスのみとなる緊急事態が発生。
昨シーズン限りでチェルシーを退団し、フリーのまま新シーズンを迎えたカバジェロが1か月の短期契約でサウサンプトンに加入し、即スタメンとなった。
CBのサリスとボランチのロメウはイエロー5枚累積による出場停止で代役にJ.スティーブンスとディアロが抜擢された。
不安定ながら狙いは明確だった15分間
サウサンプトンはRBグループの系譜にあるハ―ゼンヒュットル仕込みの4-4-2のハイプレスで試合開始からアーセナル陣内に押し込み、奪ってショートカウンターからの得点を狙った。
アーセナルは4-4-2のハイプレスに対して、可変でズレを作るよりもゾーン1(ディフェンシブサード)から丁寧に1つ1つパスを繋ぎサウサンプトンのプレスを食いつかせてからそのプレスを乗り越えた先で手薄なサウサンプトン陣内に侵入したい狙いだった。
GK含めたビルドアップの際、冨安の外側にパスコースを作る役割がWGのサカではなくトップ下のウーデゴールがサイドに流れてパスコースを作っていた。
サカには高い位置に残り、SBをピン留めすることで前プレスに参加させない、または参加を遅らせる狙いと敵陣での受け手としての役割があったからだろう。
左のマルティネッリも右からのサイドチェンジをサイドの高い位置で受けて仕掛けるシーンが多かったため、左からも同様の組み立てをしていた場合、同じタスクを担っていたと考えられる。
4-4-2のプレスに対してCBから低い位置のSBに出すというのは相手のプレスの終着点になりやすく、基本は避けたい選択肢だが、この試合では冨安が少し内側に絞り、タッチライン際にウーデゴールが流れることで外へのパスコースを確保、さらには2トップの間に立っていたトーマスがボールが右に移動すると冨安からのパスコースを作り直していたことで中央へのパスコースも生まれた。
冨安にプレッシャーをかける左SHのテラの内・外2つのパスコースを自分の両脇に用意されたことで、サウサンプトンのプレスをかわしやすくなったのだが、試合開始から15分はシンプルにパスがずれたり、タッチ数が多かったことでサウサンプトンのプレスに捕まり、ショートカウンターからピンチを迎えるシーンがあった。
先制点のシーンではホワイト→トーマス→冨安→ウーデゴールのパスワークをすべてダイレクトで行えたことでサウサンプトンのプレスがすべて後手に回ったこと、サウサンプトンのプレスを超えた先でウーデゴールから直接サカに出すのではなく冨安を経由したことでサカが外に流れてフリーになる時間が生まれた事も綺麗にパスがつながった要因として挙げられる。
そして、フィニッシュの局面では冨安がそのままエリア内に侵入したことでサウサンプトンはラカゼットにマークを絞れなくなり、ラカゼットのゴールにつながった。
前節からの反省と修正
前節の課題はとにもかくにもライン間で受けるべきラカゼットとウーデゴールが相手の4-4-2のブロックの中盤より前まで下りてきたことと、チームとしての裏を狙う意識が低いことの2つで、これにより自分たちで自分たちの首を絞めていた。
さて、試合中の修正力には疑問符が付くが、試合を跨いでの修正はそこそこちゃんとしているアルテタがどう修正してくるのか。
まず目立ったのはジャカの立ち位置、普段はトーマスの隣かガブリエウとティアニーの間まで下りていくが、この試合では降りてもトーマスの横、メインはトーマスの斜め後ろ、IHのような立ち位置だ。
サウサンプトンは4-4-2で前から捕まえに行く際、アーセナルのダブルボランチに対してサウサンプトンもウォード=プラウズとディアロのダブルボランチが前に出て捕まえに行くので、ダブルボランチが縦関係になりやすく、右ハーフスペースでウーデゴールが浮きやすくなった。
ホワイトにはアームストロング、冨安にはテラがプレスに行く格好になったが、どちらもプレスに来る選手の両脇にパスコースが存在したため、比較的前進しやすく、右からの攻撃が増えたのはこれが理由だろう。
左はジャカがウォード=プラウズを引き付ける位置にいることでラカゼットもライン間で縦パスを受けつつエリア内に侵入し、ストライカーとしての役割に比重を置けた。
また、マルティネッリが幅を取った所から仕掛けることが多く、ティアニーのインナーラップの頻度が高かったこともこの試合の特徴の1つだ。
前線4人が裏2人ライン間2人でバランスが取れたことで渋滞を起こしたり孤立したりすることが減り、ボール保持もスムーズになり、冨安とティアニーの両SBがインナーラップとオーバーラップを使い分けて攻撃に厚みが増した。
前からの連動した守備
4-4-2のままオーソドックスなビルドアップを行うサウサンプトンに対してアーセナルも前からの4-4-2の守備を行った。
2トップと両WGが4バックを捕まえダブルボランチにはダブルボランチが前にスライドすることを徹底することでビルドアップを阻害し、蹴らせて回収することで保持の時間を増やすことに成功。
ここからさらに求めることと言えば、相手がプレスがはまっている状態から修正してきた場合どう対応するかが求められる。
敗れた2節のチェルシー戦でも試合開始からのプレスは機能していたものの、トゥヘルの修正に対する修正ができずに敗れてしまった。
幸い、サウサンプトンはそれをしてくる相手ではなかったためそこまでは問われなかったが、対戦する相手次第では要注意だ。
また、冨安の神対応とラムズデールの好セーブで救われたが、ハーフスペースに飛び込む選手に対する対応もまだあいまいなままだった。
とはいえ、この試合良かったのは何よりも先制した後も前から行く姿勢を継続したことだ。
最近は仕組みが同行よりそれすらできていない試合が多かっただけにこれは大きな収穫だ。
おわりに
GKからの丁寧なビルドアップから生まれた1点目。
サイドtoサイドで振ってから最後は冨安のクロスからティアニーの折り返しにウーデゴールが頭で合わせて3戦連発のゴールを決めた2点目。
CKでニアに走り込んだガブリエウが頭で流し込んで生まれた3点目。
アルテタアーセナルの良さが詰まった全得点と言えるだろう。
そして、この試合良かったのは点を取った後だ。
パレス戦、ユナイテッド戦、エヴァートン戦と先制した後のゲームの進め方がずさんで勝ち点を取りこぼす試合が多かったが、この試合では攻撃の手を緩めることなく3点を奪い、そしてその後も何度もゴールに迫るシーンを演出したこと、試合の最後までボールを握ってゲームをコントロールできたことが何よりの収穫だった。
アウェイで2戦連続逆転負けというムードの悪い流れを断ち切るホームでの完勝。
そして、次節は4位ウェストハムをエミレーツスタジアムで迎え撃つ重要な1戦だ。
トップ4フィニッシュを狙うためには上位3チームは格が違うので仕方ない部分もあるが、ウェストハムには負けるわけにはいかない。
スミスロウも次節には復帰できるだろうが、そうすると誰を外すのかという点でも頭を悩ませることになるが、果たしてどんな人選になるだろうか。
スパスィーバ
エジルに見惚れてグーナーになった人。18/19シーズンから戦術ブログを開設してリーグ戦全試合のマッチレビューを投稿している戦術系グーナーです。