【考察】アーセナル×ウィリアム・サリバ「2年越しのデビュー」
普段はこのタイトルの時は新加入(候補)選手を取り扱うが、今回は少し趣向を変えて長いローンによる旅を経てようやくアーセナルで本格的にデビューを飾ったサリバについて書いていく。
2019年夏に3000万€でアーセナルがサンテティエンヌから獲得し、予定通り19/20シーズンはローンでサンテティエンヌに残留し20/21シーズンにアーセナルデビューを飾る予定だったが、諸事情により20/21シーズン前半は出番なし、シーズン後半はニースにローン移籍しそこでもベスト11級の活躍を披露した。
しかし、21/22シーズンはマルセイユにローンで加入し、ここでも大活躍。
そして、21/22シーズンはいよいよアーセナルに帰還し、PSMから出場してプレーを重ねている。
そんなサリバについて改めて解説していこうと思う。
もくじ
プレースタイル(データ編)
サリバは攻撃数値は平均以下だが、プレー精度は極めて高く、守備も質は平均程度で量はリーグ屈指の数値を記録している。
プレースタイルに目を向けると守備は潰しに行く守備(Disrupt)も平均程度には意欲的に行うが、それ以上に空間を守る守備(Recover)への意欲が高いことが見て取れて、ボール保持の局面ではロングパスよりもショートパスでのビルドアップを好む傾向がある。
空中戦はあまり意欲的でなく、空中戦の強さもオープンプレイ、セットプレイ共に低い数値だ。
ボール保持時の対人戦は強いが非保持時の対人戦はあまり強くない。
ボール保持におけるスタッツが軒並み高い。
とりわけプログレッシブパス(ピッチの自陣側40%以外で10ヤード以上ボールを前進させるパス)とプログレッシブキャリー(ピッチの自陣側40%以外で5ヤード以上ボールを前進させるキャリー)の数値が極めて高くサリバが自分でボールを前に運ぶことができる選手だということが分かる。
守備はタックル、インターセプトともに平均程度にできるが、若干インターセプトの方が得意なのは先ほどのSmarterscoutの分析で空間を守る守備の方が意欲的な証明だろう。
プレースタイル(実際に見ての分析)
ここからは実際に試合を通して見た時のサリバのプレーがどうだったかを書いていく。
対象となる試合は今年の6月に行われていたUEFAネーションズリーグでフランス代表としてフル出場を果たしたクロアチア戦とオーストリア戦、アーセナルに戻ってきてから出場した親善試合のエヴァートン戦とオーランドシティ戦、チェルシー戦だ。
特にアーセナルに戻ってきてからはこのうちの下3つは試合を追うごとに良くなっている印象だ。
前に出て潰す守備はアーセナルに戻ってきた1試合目のエヴァートン戦からよかったし代表でもいいからずっといい。
だから、前に出て潰す守備はスタッツとかSmarterscoutの数字以上に評価していいだろう。
カバーリング範囲の広さも代表での試合から目立っていて、守備に関しては出ていく守備も構えて守る守備もできるタイプに見える。
ビルドアップ時のキャリーや楔のパスは代表でも良さとして出ていてエヴァートン戦では「あれ?」って感じだったが、オーランドシティ戦、チェルシー戦とアーセナルでの試合を重ねるごとに良くなっているため、チームになじんだことでプレーしやすくなったと考えられる。
また、ビルドアップでも守備でも首を振る回数が多く、それで周りを把握できるのも評価できる。
ビルドアップに置いて周りを見れることの重要性は言わずもがな、守備でも身体能力任せではなく首を振って周りを見ることで相手に先回りしてカバーできるため、息の長い活躍も期待できる。
ネーションズリーグでは何度か相手との競り合いの中で体を入れ替わられてキープされるようなシーンが目についた。
先回りして対応できるときは問題ないが、純粋なフィジカルバトルになると少し後手を踏む可能性があるのかもしれない。
また、クロス対応でマーカーを見失い、フリーにしてしまったことで代表では失点、アーセナルでもエヴァートン戦ではセドリックが戻って対応したことで失点は免れたがあわやというシーンがあった。
直前まで周りを見渡したり、手でマーカーの位置を探ったり、という工夫はしていたが、どちらも共通しているのはマークする相手を背中側にいれてしまっているという点で、これは修正が必要なポイントです。
おわりに
起用法については既に3試合アーセナルで起用されており、右CBでビルドアップ時にキャリーやパスでの前進を目指すという役割でここから何か加わることもないと考えられるので、今回は無しです。
昨シーズンホワイトが加入した時にサリバCB、ホワイト右SBを提唱していたことからわかるように筆者は結構サリバに期待を寄せている。
とはいえ、プレシーズンに見せてくれたパフォーマンスはその期待を上回るものだった。
冨安がケガで不在なことを考えると開幕はサリバCB、ホワイト右SBで行く可能性が高い。
チェルシー戦を見ると分かるように、やはりアーセナルはベストメンバーを組めれば強い、あとはいかにけが人が出た時にスカッドの質を維持するかにかかってくる。
そうなった時に、ホワイトCB、冨安右SBと同程度かそれ以上のクオリティをサリバCB、ホワイト右SBで保てるのはかなりのプラスだ。
ということで、開幕を楽しみにしましょう。
エジルに見惚れてグーナーになった人。18/19シーズンから戦術ブログを開設してリーグ戦全試合のマッチレビューを投稿している戦術系グーナーです。