【マッチレビュー】ブライトン対アーセナル「意図を持った相手への対応」
昨シーズンは良いサッカーをするも決定力のなさが響き残留争い、ゴール期待値に対する実際に決まったゴールの少なさをネタにされてきたブライトンですが、今シーズンはゴール期待値通りの得点を決め、上位争いに名を連ねています。
ブライトンのポッター監督は様々なシステムを使い分け、相手に対応した対策を練ってくる良い監督で、昨シーズンシーズンダブルを食らったアーセナルに対して、前節スパーズ相手に快勝したアーセナルに対してどんな策を用意してくるのか注目です。
もくじ
試合ハイライト
ブライトン0-0アーセナル
両チームのスタメン
後半ATのモペイのゴールで同点に持ち込んだクリスタル・パレス戦からは1人のスタメン変更となっています。
パレス戦で負傷交代したウェルベックに加え、ビスマやウェブスターといった主力の選手たちが負傷離脱を強いられている状況です。
快勝した前節ノースロンドンダービーからは1人のスタメン変更となっています。
ジャカは膝の内側の靱帯の損傷により3か月の離脱になるだろうという見通しです。
ブライトンの前プレス
ブライトンは初期配置の5-3-2から守備時は4バックに可変します。
アーセナルのビルドアップはこの試合では、右からの組み立ての際は、3バック色強めの配置になっており、それに対するブライトンはWBのククレジャが前に1列スライドして冨安にプレッシャーをかけます。
その背後は左CBのバーンが横にスライドしてサカに対して後ろから潰しに行く形で、逆サイドのWBのフェルトマンはククレジャとは違い前に出ず、DFラインの一角に入っていました。
プレスの形は1トップのモペイが中央からサイドに追い詰めていくような追い方をし、トロサールはアンカーをマークし、同サイド圧縮で追い詰め、あわよくば冨安から奪ってショートカウンターに移る狙いでした。
アーセナルの左からのビルドアップは右からの3バックの組み立てとは異なり、ボランチのロコンガが左CBのガブリエウよりも外に開き、2-3-5の形に寄るビルドアップを採用していました。
スパーズ戦で上手くいっていたビルドアップは3-2-5から2ボランチが内側でパスコースを作りCBからパスを引き出して中央から前進するか、囮になることで3トップを内側に寄せて外を使うビルドアップでした。
では、なぜそのまま継続しなかったのか。
考えられる理由は2つあります。
1つ目はボランチがジャカからロコンガに代わったことです。
今夏加入、それも即戦力というより将来性込みで獲得したロコンガはまだプレミアリーグの高い強度の中で安定したプレーを披露するレベルになく、2トップの背後、ボランチの前という360度の視野の中で、シンプルに捌くか前を向いて運ぶかの判断を迫られる3-2-5の2の一角としてのプレーは難しいでしょう。。
また、このポジションは後ろから寄せられても慌てない冷静さも求められます。
ジャカはかつてはそういったプレーが苦手でしたが、昨シーズン終盤から3-2-5の2で中央でのビルドアップになれ、EURO2020でも3-4-1-2のダブルボランチとして中央で安定したパフォーマンスを披露し、スパーズ戦でもそれを見せてくれました。
ロコンガはまだまだ伸びしろの塊です。
そこで、アルテタ就任直後のジャカ同様に左に降りた所からのビルドアップから始まり、いずれは中央からのビルドアップに関与するようになるためのステップなのではないかと推測します。
2つ目はブライトンの前プレスが2トップという点です。
スパーズの3トップの場合、CFと両WGの間に2つの道があり、そのどちらも通せるようにすることで、初めて3トップを内側に収縮させることができます。
ですが、ブライトンは2トップのため、道は2トップ間の1つで、そこを通したり、収縮させる役割は1アンカーのトーマスで成立すると考え、トーマスが中央でパスコースを作る動きをし、2トップが内に寄れば外からロコンガがビルドアップに加わる形を考えていたのではないでしょうか。
しかし、ブライトンは3-5-2から4-4-2に可変する前プレスで、アーセナルが左から組み立てる際には2トップは縦関係でCBとアンカーを抑えるのではなく、2トップがホワイトとガブリエウの2CBにプレッシャーをかけ、ロコンガにはIHの位置からグロスが内から外に追い出すようにプレッシャーをかけることで、アーセナルのビルドアップを詰まらせていました。
左右のビルドアップで共通していたのは、高さは非対称でしたが、ブライトンのWB vs アーセナルのSBのマンツーマンを敷くこと、ブライトンのインサイドバック(3バックの左右)の選手がアーセナルのWGを監視することの2つのように感じました。
前からマンマーク気味のプレスをはめてアーセナルを苦しめるブライトンでしたが、マンマークのプレスで前からの圧力を強めてくるということはその背後にスペースが生まれるということです。
75分のスミスロウのシュートにつながったシーンは、前からのプレスがはまったところからラカゼットが縦パスを引き出して、レイオフで前を向いたトーマスに落とし、トーマスから裏へのパスにスミスロウが抜け出しました。
逆サイド上がってきたサカへの折り返しのコースを封じ、シュートコースの限定される方へ誘導したダフィーのプレーもあり、得点にはつながりませんでした。
このシーン、裏を使ったこともそうですが、降りるラカゼットと飛び出すスミスロウの2人で最終ラインのずれを生み出したことも評価できます。
また、ブライトンの守備は理にかなっている点はもちろん評価できるのですが、それ以上にチーム全体のとランディションの際の意識と強度の高さが目立ちました。
特に、モペイとトロサールの2トップの前プレスとプレスバックは厄介で、アーセナルに後ろから落ち着いてつながせませんし、敵陣に侵入してからも常にあわよくば奪ってそこからカウンターを狙ってやろうという狙いが伝わってきました。
それこそ、ノースロンドンダービーの時のアーセナルのような気迫を感じましたね。
アーセナルの前プレスとGK含めた4バック
ブライトンはビルドアップ時はGK含めた4バックのビルドアップを多用してきました。
アーセナルの前プレスは3トップとトップ下で3バック+1アンカーは抑えられますが、4バックに対しては、中央のオーバメヤンがCBを抑えつつGKまで寄せるため、GKが縦パスを出すか、GKからCB経由で逃げることも容易になっています。
サイドの守備はWGはWBかIHへのコースを抑えながら、インサイドバックに出ていき、降りてくるIHに対してはボランチが縦にスライドして抑え、WBにはSBがスライドする形になっています。
ブライトンはボール保持時はトロサールがトップ下のようになり、中央にひし形を形成、アンカーを抑えるウーデゴールとその後ろのダブルボランチのトライアングルを形成するアーセナルに対して数的優位を保てるため、ボランチのスライドが遅れやすくなっています。
特に、ロコンガのスライドの緩さを狙われていた印象です。
オーバメヤンががっつり寄せたらCB経由で逃げられ、寄せなければGKから直接縦パスを通されるという状況に陥っていました。
出ても通され、出なくても通される、このジレンマのせいもあってかオーバメヤンとウーデゴールの中央担当とサカ、スミスロウのサイドの前プレス担当の間で意思の統率が取れず、プレスがかみ合わないシーンがありました。
ウーデゴールがオーバメヤンが前に出た時、自分でアンカーを抑え、スミスロウやサカに前に出るように促すようなシーンもいくつかありました。
おわりに
大雨と強い風の影響もあり、ボールタッチが乱れるシーンも多くみられるようなタフなゲーム、さらに相手は好調で、なおかつ3連勝中に対戦してきたチームと違い、試合前からの対策を仕込んで理詰めで殴り合えるブライトンとのアウェイゲームということで勝ち点1を拾えたことは大きいと思います。
ですが、ラカゼットをもう少し、速く投入したり、タヴァレスかマルティネッリを入れたりするような攻めの姿勢を見せても良かったのかなと思いますが、交代策に関しては経験を積んでいつか上手くなって欲しいです。
個人的にはそれ以上に、「今日はこれ!」と決めたプランAを読まれたり、対策されたときにプランAのまま行くのではなく別のプランBを用意していて欲しいなと思いました。
ここから再び代表ウィークに入るということで、リーグ再開したらまたいい流れを作ってもらいたいですね。
あぁ、そうそう。それと、クラブは代表のためにあるわけじゃないから代表のために冨安をCBで使ってほしいとかそういうのありえないから。
もっと空中戦とかホワイトの持ち上がりを活かすためにとかでそういうこと言うならいいんですけどけどあれはちょっと…
ここまで読んでいただきありがとうございました。
スパスィーバ
エジルに見惚れてグーナーになった人。18/19シーズンから戦術ブログを開設してリーグ戦全試合のマッチレビューを投稿している戦術系グーナーです。