【マッチレビュー】アーセナル対クリスタル・パレス「暴力には屈しない」
2週間の代表ウィークを終え、週末にはアーセナルが帰ってくる…と思いきや火曜の朝まで待たされてようやく迎えたアーセナル対クリスタル・パレス。
インヴィンジブルズのキャプテンとしても知られるアーセナルのレジェンド、パトリック・ヴィエラが監督としてエミレーツ・スタジアムに凱旋を果たしています。
もくじ
試合ハイライト
アーセナル2-2クリスタル・パレス
両チームのスタメン
アーセナルはブライトン戦からは1人のスタメン変更となっています。
ペペはバーンリー戦以来3戦ぶりのスタメン復帰となっています。
また、ジャカは年明けのフルトレーニング復帰を目指しているようで、当初の想定よりも重傷だった様子です。
クリスタル・パレスはレスター戦からは1人のスタメン変更となっています。
ザハののメンバー外が直前に発表されており、何らかのアクシデントがあったのでしょう。
アルテタのボール保持時2-3-5
ビルドアップ時に冨安は試合を追うごとに中央に絞る頻度が増し、この試合でもトーマスの横まで絞りビルドアップをサポートする役割を担っていました。
チームとしてはこの試合も2-3-5ビルドアップを採用しています。
この試合、これまでと違ったのは左サイドの流動性です。
これまではFW-MF間で待つ選手、ハーフスペースで待つ選手、大外で張る選手の役割が固定されていましたが、この試合ではウーデゴール、サカ、ティアニーが循環し役割を交換するシーンがいくつかありました。
また、ティアニーのミドルサードからアタッキングサードでの意識でこれまだは縦突破からのクロスしか選択肢を持っていませんでしたが、この試合では早目に内側に視野を取り、逆サイドへの展開を試みたり、カットインからバイタルエリアの選手に出すシーンが増えていました。
一方、右サイドはペペが張った所からの仕掛けで苦戦し、冨安のサポートもサカが右WGのサイト比較して少ないため、苦戦傾向にありました。
ペペの場合、サカと比較してボールを受けてからどうしても相手に背を向ける場合が多く、突破の選択肢が減っていた印象です。
先制点のシーンは、こぼれ球を回収して向かってくるDFに対して向き合ってシンプルにはたき、冨安とのワンツーからエリア内に侵入し、左足でのシュートを放ち、そのこぼれ球をオーバメヤンが押し込み先制に成功しました。
普段ももっと正対する意識があれば、張った所からの選択肢も増え、ペペも周りも機能するようになるのではないでしょうか。
クリスタル・パレス側の守備としては、4-4-1-1で2列目の3人がそれぞれWGは大外と、2-3-5の3のそれぞれ近い選手、トップ下のギャラガーはトーマスと2-3-5の3のボールサイドの選手の中間ポジションに立ち、CFのベンテケの同サイド圧縮に連動して追い詰めていく形を採用していました。
また、先制点を許した後からはトップ下のキャラガーがIHに下がり、WGのアイェウがキャラガーよりも前に出て4-3-3に可変してアーセナルの2-3-5の2→3へのパスコースを1人1つ抑えるプレスの形を見せてアーセナルのビルドアップを苦しめました。
この時、ハーフスペースの選手はIH、大外の選手はSBが捕まえに行けるため、チーム全体としてマークが整備されていた印象です。
先制点をゲットしてしばらくしてからビルドアップの際に安易にボールを手放していた理由の1つにこのクリスタル・パレスの前プレスの形に対応できなかったことがあると考えています。
ヴィエラのボール保持時3-2-5
クリスタル・パレスのビルドアップは4-2-3-1から左SBが高い位置で幅を取る一方、右SBは最終ラインに残り3バック化、右はWGのアイェウが幅を取る3-2-5可変のビルドアップを採用していました。
シンプルかつ守備時4-4-2に対して優位を取りやすいビルドアップの配置になっています。
アーセナルは守備時4-4-2(4-4-1-1)でボランチへのコースを抑えながらCBにプレスをかけ、WGは外切りのコースカットプレスでCBを追い詰めます。
ボランチは前にスライドしてボランチを捕まえることで守備陣形全体を押し上げる役割を担います。
3-2のビルドアップの優位性もそうなのですが、結局のところ丁寧なビルドアップで詰まったとしても前にいるベンテケやエドゥアールに当ててしまえば何とかなるというのがこのチームの厄介なところです。
特に、エドゥアールはターゲットマンとしてだけではなく、ハーフスペースで受けてから前を向いても脅威となる存在になっていました。
右SBの冨安はエドゥアールも警戒しますが、大外のミッチェルにパスが入ったら寄せる役割もあるため、どうしてもその背後が狙われやすくなっていた印象です。
右CBのホワイトは間合いを取って遅らせる守備や上手くボールだけを突っつく守備、前に出ていく守備を見せ、ポゼッションの流れからのクリスタル・パレスの攻撃でエドゥアールにそこまで決定的な仕事をさせませんでした。
(失点シーンはカウンターからの流れで守備陣形も整ってなかったから…)
-アーセナルの守備の問題点はどちらかというと、ミドルサードからゾーン1(自陣側の3分の1)の守り方にあるように感じました。
前からの守備では4-4-2で行くのですが、撤退守備では4-1-4-1気味になる時と4-4-2になる時があります。
この切り替えが曖昧だからか、トーマスの脇が空いてしまい、縦パスを通されるシーンが目立っており、失点シーンと同じくらい改善が急がれる形でした。
ロコンガ投入
前半終了間際にサカがマッカーサーからとんでもない暴力行為を受けて負傷交代。
HT明けにボランチのロコンガが投入され、スミスロウ左WG、ウーデゴールトップ下にポジションを変えます。
その影響で、ビルドアップ時はトーマスとロコンガが並ぶ3-2-5に近い形になりました。
さらに、ラカゼットを投入し、オーバメヤン左WGスミスロウトップ下に変更。
ラカゼット投入後は目に見えてボールの循環が良くなりましたが、その前から縦パスを通せるための配置に変化していたこともラカゼット投入後の目に見えてわかる変化につながったと言えます。
この後、同点を許し、押し込む展開からロコンガの不用意なボールロストからのカウンターで逆転を許してしまいます。
敗色濃厚化に思われた後半アディショナルタイムにCKからのこぼれ球がラカゼットのもとに転がり込み、押し込んだことでヴィエラ監督の手から勝ち点3が零れ落ち、アルテタ監督はかろうじて勝ち点1を拾う結果になりました。
おわりに
同じくラカゼットの後半ATの劇的同点ゴールでドローになったエメリ期末期のホームのサウサンプトン戦と状況は似ていますが、選手のモチベーションが雲泥の差です。
また、この試合、ボールロスト後の守備の強度を見ていてもアルテタの求心力が落ちていないということがうかがえます。
しかし、アルテタの目の前には課題が山積みです。
この試合の前半と後半、さらには今シーズンのバーンリー戦、クリスタル・パレス戦とトッテナム戦を比較し、今のアーセナルに最適解となる戦術は何なのかを今一度見つめ直してほしいところです。
ヴィエラはサカに対するマッカーサーのファールについて尋ねられ、「よく見えなかった」と答えています。
ヴェンゲル譲りの模範解答ですね(笑)
インタビューではこれでいいですけどロッカールームではちゃんと注意しててほしいところです。
スパスィーバ
エジルに見惚れてグーナーになった人。18/19シーズンから戦術ブログを開設してリーグ戦全試合のマッチレビューを投稿している戦術系グーナーです。