【マッチレビュー】アーセナル対トッテナム~左サイドの攻防~
20/21シーズンプレミアリーグ第28節アーセナル対トッテナム、ついにやってまいりましたノース・ロンドン・ダービー。
数多のスーパーゴール、数多の逆転劇で彩られてきた激戦必至の白熱のダービーです。
お互い、ELからの中3日ですがスパーズはロンドンにずっと残っていた一方、アーセナルはギリシャ遠征から帰ってきてこの大一番を迎えました。
アーセナル2-1トッテナム
もくじ
両チームのスタメン
ELから中3日ですが、スタメン変更は3人、ほとんどフルメンバーで挑みます。
オーバメヤンは規律違反(遅刻)に対する懲罰的な意味合いでのスタメン落ちのようです。
ただ、現状で最もいいサッカーができるメンバーがそろったと思うのでこれは期待大ですね。
同じくELから中3日のスパーズは5人を入れ替えてきましたね。
ELに軸足を置いてCL出場を目指すアーセナルと違い、ELがターンオーバー組でリーグ戦に主力をぶつけてきてリーグTop4フィニッシュでのCL出場を目指している形でしょうか。
ソンケインのデュオに加えて調子を上げてきてるベイルにも警戒が必要です。
そして、チームを回す上でレギロンとホイビュアの存在はアタッカー人と同等レベルで欠かせないでしょう。
両チームの二次配置
アーセナルのボール保持時
アーセナルのビルドアップに対して、スパーズは4-4-2のブロックを敷いて守ってきました。
2トップはアーセナルの最終ラインに対しては強く出ていかず、最終ラインがボールを持つことは許容する一方、トーマスを経由して中央から前進されることを嫌がっている印象でした。
しかし、最終ラインから自由にボールが出せるとなると、ダビド・ルイス中心に対角線や裏を狙うフィードでスパーズの守備ブロックをうまく揺さぶることに成功。
スパーズのSHは左は中に絞ったところから上がってくSBにもついていく一方、右のベイルは最終ラインからティアニーへのパスコースを切る立ち位置でアーセナルのビルドアップを阻害しようとしていましたが、パスが通された後の戻りが遅かったこともありドハティは難しい対応を強いられていました。
ホイビュアはミドルサードまでは前プレスの一角として縦パスのコースに制限を加える立ち位置で前に出ますが、低い位置ではスミスロウのニアゾーンランへの対応に奔走し、かなりタスク過多な印象です。
ホイビュアの相方のエンドンベレは前に出ていったりサイドに流れるホイビュアの分もCBの前でフィルター役になろうとしていました。
この試合のウーデゴールは直近数試合と比較してよかったですね。
これまでは相手の中盤の前で受けて攻撃の起点になるのがメインで、今日もその役割はこなしていましたが、それ以上に右の深い位置に侵入する形が目立ちました。
ラカゼットやサカが時間を作れることでウーデゴールがサイドに流れて高い位置でも仕事ができるようになったのは大きかったですね。
ラカゼットは左右のハーフスペースに顔を出し、相手DFを背負い縦パスを収めて時間を作ることでサイドからの崩しにバリエーションをもたらしました。
収めてサイドにはたくこともできますし、中央で前を向ける選手に落とすこともできます。
さらにはDFと入れ替わって前を向いたりもできるのは彼の強みですね。
スパーズのボール保持時
スパーズのビルドアップはホイビュアが即興でCBの脇や間に降りる形以外では2CBと2ボランチでbox型になりやすい欠点がありました。
そして、アーセナルはそこに2トップでのプレスを当てはめてボランチを抑えながらCBに圧力をかけることでたちまち出しどころが無くなり、攻撃は機能不全気味に陥っていましたね。
スパーズの攻撃はラメラのスーパーゴールを除けば機能していたとは言い難いです。
ビルドアップのスタートで苦しんだのもそうですが、前線で起点になるケインが機能しなかったのも痛手でした。
降りていくケインに対してマガリャンイスがついていき、ボールを収めさせないことでスパーズの攻撃をシャットアウト、さらにはそこで奪うことでアーセナルの攻撃の起点にもなっていました。
髪を黒く戻してついにコンディションが完全に戻ってきたマガリャンイスはやはりプレミアでも格別なCBです。
ケインからの展開ができないため、ソンの裏を狙う動きも活かせず、ソンが負傷交代したシーンのように最後尾から1発で狙うしかなくなり、再現性、期待値ともに低い攻撃になっていました。
それから、ソンが交代後はモウラが左に移り、裏を狙いつつもライン間で仕掛けるのは終始脅威でしたね。
終盤はトーマスの集中力も怪しかったですが、その前からルーカス・モウラの対応には手を焼いていました。
左サイドの主人公は誰なのか
今日の試合、左サイドからの連携と単独突破を交えた崩しが特にスパーズの守備陣の頭を悩ませていました。
ティアニー単独でも十分に脅威でしたが、そこに上乗せをできたのはスミスロウがいたからでしょう。
ティアニーは対面のドハティに対して明らかに質的優位を保持していましたが、それだけではなく、スミスロウがその背後をニアゾーンランで狙うため、ドハティは常にドリブルで仕掛けてくるのかスミスロウへのパスなのかの2択を迫られ、結果として後手後手を踏んでしまった形でした。
ホイビュアがこのニアゾーンランについてきているため、スミスロウはプレー選択に多少の制限は付きますが、それでも深くえぐってからのマイナスの折り返しは幾度も決定機を演出し、前半だけで記録したキーパスは何と4本。
スミスロウの動き出しの良さが特に光った試合でした。
そして、25分のホイビュアを緩急ではがしてマイナスの折り返しを入れたシーンのようにスミスロウはオンザボールでも違いを作り出せる選手でもあります。
同点ゴールのシーンはティアニーの突破も見事でしたが、スミスロウのポジショニングも秀逸でした。
ティアニーが持ったとこでニアゾーンランの動き出しを見せて立ち止まることでエンドンベレはスミスロウのマークを放してドハティのサポートに行くことができませんでした。
また、ニアゾーンランをしようとしてストップをかけられるのもスミスロウの強みです。
仮にそのまま走っていればドハティがパスコースを切りエンドンベレが中を切る1対2の構図になっていた可能性がありますが、そこで立ち止まり、近くでパスも受けられる状態になることでエンドンベレをピン留めすることに成功しました。
天国と地獄を味わったラメラ
19分にソンフンミンが裏を狙うスプリントをかけた際にハムストリングを痛めた様子でその直後に負傷交代、代わりにピッチに立ったのがラメラでした。
先制点はベイルのサイドチェンジをレギロンがワンタッチでルーカス・モウラに折り返して最後はラメラのラボーナから生まれました。
ベイルのサイドチェンジとレギロンの折り返しも見事でしたが、ルーカス・モウラに対してはセドリックとトーマスでしっかりとシュートコースを塞げていましたし、ラメラへのパスが少し右にズレた時点でここは凌げたと誰もが思ったでしょう。
あれはあのパスからラボーナでトーマスの股を抜いて決めたラメラをほめるしかありません。
その後は、荒いプレーとファールが続き69分、76分と立て続けにイエローカードを貰い退場となってラメラ劇場は閉幕となりました。
ぺぺ投入の狙いとは?
後半頭にサカを下げてぺぺを投入。
前半からサカはレギロンの守備に苦しめられていました。
その中でもキープして時間を作ったり惜しいシーンはありましたが、危ないシーンもありました。
そこで、フィジカル的に強くて負傷しにくく、1対1で仕掛けられるペペを投入したのではと考えられます。
それから、左からのマイナスのクロスに合わせて追加点を奪いたいという意図はあったでしょう。
ぺぺと言えば、ドリブルからの巻くようなシュートが売りですが、同じくらいに左からのマイナス方向へのクロスに左足で合わせるのが上手いです。
直近でもバーンリー戦ではシュートミスと相手のシュートブロックに阻まれて得点にはなりませんでしたが、決定機を迎えていました。
61分にはゴールキックをペペが見事な予測からのインターセプトとそこからの強烈なパスでラカゼットのシュートを演出、PK獲得に貢献しました。
継続性こそ欠けるものの時折ペペが披露する守備からのチャンスになりました。
まとめ
理想はスパーズが10人になった後にもう1点取って終わりたかったですが、ノース・ロンドン・ダービーらしい逆転勝利でした。
ただ、スパーズが数的不利になってアーセナルは逆に慌ててゲームの主導権を渡してしまったのはいただけません。
自分たちが10人になることはあっても相手が10人になることはめったにないため、自分たちのプレーを見失ってしまった印象です。
終盤、集中力が切れたからかイージーミスの多かったトーマス、本来試合を落ち着かせる役目だったはずがパスミスなどでチームをばたつかせてしまったウィリアン、この2人は特に要反省ですね。
一方、チームを鼓舞し続けたダビド・ルイス、最終ラインで踏みとどまり続けたマガリャンイス、前線から指示を飛ばし続けて何より自分が守備に走り回ったウーデゴールはスパーズが10人になった後も賞賛に値するプレーでした。
ELラウンド16対オリンピアコス2nd legに向けて
ホームで行われる2nd legは油断は禁物ですが、アウェイで行われた1st legを3-1で勝利して折り返したことで多少の余裕が生まれたのも事実です。
予想スタメンの注目ポイントはやはり前線の人選でしょう。
それぞれ前半、後半のみのプレーだったサカとぺぺはプレイタイム的には次もスタメンの可能性は高いでしょう。
トップ下はここ数試合おそらく誰よりも運動量が多いであろうウーデゴールはこの辺りで休ませたいでしょうからスミスロウの可能性は高いです。
1トップはオーバメヤンもあり得ますが、どうやら今日の試合後、他の選手がウォームダウンを行い、アルテタがインタビューに答えている間に1人で帰ってしまったとの報道もあります。
仮にこれが事実だとしたら規律を重んじるアルテタは次もスタメンから外し、次はベンチ外の可能性すらあるかもしれません。
逆に、ウィリアンが勝手にドバイに行って帰ってきた次の試合でスタメンに名を連ねてたケースもあるのでどうなるかはわかりませんが。
何はともあれ、EL2nd legオリンピアコス戦は冷静な試合展開で確実に価値をものにしてほしいですね。
スパスィーバ
エジルに見惚れてグーナーになった人。18/19シーズンから戦術ブログを開設してリーグ戦全試合のマッチレビューを投稿している戦術系グーナーです。